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身体活動量・座位時間・ディスプレイ視聴時間とドライアイとの関連について
-身体活動量・座位時間・ディスプレイ視聴時間とドライアイとの関連について-
私たちは、いろいろな生活習慣・生活環境と、がんなどの生活習慣が関係する疾病との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成23年から28年までに次世代多目的コホート研究対象地域にお住まいで、本研究へ同意いただいた40-74歳の男女約10万2千人を対象に、アンケートの回答結果に基づいて、身体活動量・座位時間・ディスプレイ視聴時間とドライアイとの関係について専門誌に論文発表しましたのでご紹介します。(Ocular Surface 2019年10月ウェブ先行公開)
ドライアイとは、涙の乾きなどの異常により、目の表面の健康が損なわれ、眼の不快感が生じる疾患です。近年、スマートフォンの長時間利用や、コンタクトレンズ装用者の増加などによって、わが国でもドライアイ患者は増加しています。これまで職域を中心とした疫学研究から、ドライアイの危険因子として、身体活動量の低下、長時間の座位やディスプレイの視聴といった生活習慣が報告されてきましたが、地域住民を対象とした大規模な疫学研究からの報告はありませんでした。
研究開始時のアンケート調査において、身体活動量・座位時間・ディスプレイ視聴時間・ドライアイに関する質問項目に回答のあった102,582人を対象としました。身体活動量は、仕事や余暇の運動について、座っている時間、立っている時間、散歩などでゆっくり歩く時間、ウォーキングなど早足で歩く時間などの、1日の平均的な身体活動時間に運動強度指数:Metabolic equivalent(以下MET)値をかけたスコアを算出し、男女別に4つのグループに分けました。そのうち、座位時間は、座っている時間のみを取り出し、4つのグループ(1時間未満、1~3時間未満、3~6時間未満、6時間以上)に分けました。
これらの質問とは別に、ディスプレイ視聴時間は、「あなたは、パソコン(コンピュータ)や携帯電話を使って、どのくらいの頻度で、インターネットやメールのやりとりをしていますか?」の質問に対する、【使用する日の利用時間】の回答から4つのグループ(1時間未満、1~2時間未満、2~5時間未満、5時間以上)に分けました。それぞれ4つのグループの、一番少ないグループを基準とした他のグループのドライアイの有病率を比較しました。
研究開始時のアンケートから、目の乾燥感ならびに異物感を「いつも」・「時々」感じると回答した方を自覚的ドライアイ、ドライアイと診断されたと回答した方を診断的ドライアイと定義し、自覚的ドライアイもしくは診断的ドライアイに該当する方をまとめてドライアイと定義しました。
身体活動量が少ないこと、座位時間・ディスプレイ視聴時間が多いこととドライアイ有病率の高さが関連していた
ドライアイの有病率は、男性17.6% 、女性30.6%で、女性の方が高い有病率を示しました。
身体活動量が多いグループでは、少ないグループに比べて、男女ともドライアイの有病率が統計学的有意に低いことがわかりました(図1,2)。一方、座位時間・ディスプレイ視聴時間が長いグループでは、短いグループに比べて、男女ともドライアイの有病率が統計学的有意に高いことがわかりました(図1,2)。
※年齢、地域、教育歴、収入、喫煙で統計学的に調整
まとめ
本研究の結果から、身体活動量が多い人ではドライアイの有病率が低く、座位時間やディスプレイ視聴時間が長い人では、ドライアイの有病率が高い事がわかりました。この理由として、メカニズムは十分に明らかになっていませんが、身体活動量が少ないことや、座位時間が長いと眼表面の炎症のリスクが上がる可能性が報告されており、ドライアイが起こりやすくなったのかもしれません。また、身体活動量が多いと、涙の分泌量が増えることも報告されており、ドライアイが発病するリスクが低下する可能性も考えられます。
今回の研究では身体活動量、座位時間、ディスプレイ視聴時間がドライアイと関係することが明らかになりましたが、横断研究であるため、因果関係を明らかにするには更なる検討が必要です。今後、ドライアイの発症を追跡調査した前向きコホート研究での検討が必要です。