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強度近視とその関連因子について
-強度近視とその関連因子について-
私たちは、いろいろな生活習慣・生活環境と、がんなどの生活習慣が関係する疾病との関連を明らかにするとともに、目の病気の予防に役立てる研究を行っています。茨城県筑西市に在住で、2013年から2015年までに筑西眼科研究への参加に同意をいただき、眼科手術歴のない40歳以上の男女6,101人を対象に、眼科検診と問診票の回答結果に基づいて、強度近視とそれに関連する因子についてについて検討し、専門誌に論文発表しましたのでご紹介いたします。(Journal of Clinical Medicine 2019年11月 ウェブ公開)
強度近視とは近視の度合いが強いもので、それに伴い眼球の変化が起こってくる疾患です。近視人口は近年急増しており、世界人口の約3分の1を占めています。さらに今から約30年後の2050年、全世界の約半数が近視となり、さらに強度近視は約10%にまで増加すると推測されています。眼球の構造変化が起こることにより、網膜や視神経に障害をきたし失明にもつながる重篤な疾患である病的近視が起こるといわれています。病的近視による失明者も増加の傾向にあります。また、近視が強くなるほど病的近視のリスクが高くなるといわれています。そのため、強度近視を予防することは病的近視を予防することになりますが、強度近視の危険因子はよくわかっていないのが現状です。そこで本研究は、地域住民を対象に、強度近視とその関連因子を調査しました。
研究方法の概要
茨城県筑西市で眼科検診を実施した中で、研究参加に同意のある40歳以上7098人のうち、眼科手術歴のない6,101人を今回の分析の対象としました。
強度近視の定義について
今回の研究では、強度近視は近視の度数と乱視の度数を総合した、等価球面度数注1)が、-6.0 ディオプター(D)より強い近視を強度近視としました。
注1)等価球面度数とは屈折の度数と乱視の度数を総合したもので、どの程度の近視、遠視なのかを示す数値のことです。マイナスの数が多いほど、近視の度合いが強い。
強度近視の関連因子について
眼科検査で得られた屈折値や眼圧などの計測データと健診の際に得られた身長・体重、血圧値、血液検査データ、また、研究開始時に行ったアンケートでの既往歴、眼科手術歴、喫煙歴、飲酒歴などのデータを用いて解析しました。年齢、眼圧などに関しては、「低い」、「普通」、「やや高い」、「高い」の4つのグループに分け、「低い」グループを基準とした他のグループの強度近視の有病率を比較しました。
女性、年齢が低いこと、眼圧が高いことと、強度近視有病率の高さが関連していた 本研究の強度近視の有病率は、男性3.8% 、女性5.9%と女性の方が高い有病率を示しました。
女性、年齢が低いこと、眼圧が高いことと、強度近視有病率の高さが関連していた
本研究の強度近視の有病率は、男性3.8% 、女性5.9%と女性の方が高い有病率を示しました。
図1 強度近視有病率
年齢が高いほど強度近視の相対的な危険度(オッズ比)が低くなっていることがわかりました(図2)。また、眼圧があがると強度近視の相対的危険度が高くなっていることがわかりました(図3)。
図2 強度近視と年齢との関連
※身長、BMI、血圧、脂質、血糖値、眼圧、角膜厚で統計学的に調整
図3 強度近視と眼圧との関連
※年齢、身長、BMI、血圧、脂質、血糖値、角膜厚で統計学的に調整
まとめ
世界各国の報告によると、一般的な40歳以上の集団の強度近視有病率は1-4%と報告されていますが、本研究での強度近視有病率は5.0%であり若干多い傾向にありました。
本研究では、女性で強度近視の有病率が高いこと、年齢と眼圧に強度近視との関連が認められ、女性、若い世代、高眼圧の人に強度近視の有病率が高いことがわかりました。この理由は十分には明らかではありませんが、若年層の強度近視人口が増え続けていること、強度近視に伴う病的近視に女性が多いこと、眼圧が高いことが一因である緑内障に強度近視が多いことなどが報告されており、これらは本研究の結果を支持していると考えています。
今後の研究の必要性
今回の研究では、女性、若い世代、高眼圧が強度近視と関連することが明らかになりましたが、横断研究であるため因果関係を明らかにするには更なる検討が必要です。今後、強度近視の発症を追跡調査した前向きコホート研究での検討が必要と考えます。