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自己申告による歯周病の妥当性について

-自己申告による歯周病の妥当性について-

 

私たちは、いろいろな生活習慣・生活環境と、がんなどの生活習慣が関係する疾病との関連を明らかにするとともに、歯の健康に役立てるための研究を行っています。平成25~28年(2013~16年)に、秋田県横手地域にお住まいで、本研究へ同意いただき、調査アンケートに回答し、歯科健診を行った2,404人(男性800人、女性1,604人)の結果に基づいて、自己申告による歯周病の妥当性(自己申告の正確さ)について歯科健診での歯科医師による臨床診断と比較して検討し、専門誌に論文発表しましたので紹介します(Asia Pac J Public Health 2020年8月ウェブ先行公開)。

歯科の疫学研究では、地域住民の口腔の健康状態を把握する方法の一つとして、自己申告式の調査アンケートを用いて、歯の本数、むし歯の状態、修復物、歯周病、顎関節症および咬み合わせなどを推測することがあります。しかし、日本において歯周病に関する自己申告の妥当性は十分に検討されていません。今回は、調査アンケートを用いた自己申告による歯周病の妥当性について検討しました。

調査アンケートと歯科健診時に行ったアンケートでの歯周病に関係する5つの質問「歯医者さんから歯周病(歯槽膿漏:しそうのうろう)があると言われたことがありますか?」、「歯ぐきから血が出ますか?」、「歯石がついていますか?」、「グラグラする歯がありますか?」、「歯と歯の間を清掃するために、歯ブラシ以外の用具を使っていますか?」の回答を用いて、歯科健診での歯科医師による歯周病の臨床診断との妥当性を検討しました。

 

歯周病の臨床診断

歯周病の臨床診断の診断基準にはいくつか種類がありますが、今回、世界的に最もよく用いられている米国のCenter for Disease Control and Prevention(CDC)とAmerican Association of Periodontology(AAP)による診断基準を使いました(表1)

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自己申告による歯周病の妥当性

歯科健診での歯科医師による歯周病の臨床診断では、歯周炎なしが26.5%、軽度の歯周炎が2.7%、中等度の歯周炎が55.2%、重度の歯周炎が15.6%でした。

調査アンケートからの自己申告と歯科健診の臨床診断による歯周病との妥当性はC-統計量、感度、特異度で評価しました。C-統計量は0から100までの値を取り、値が100に近くなるほど判別能力が高くなります。感度は、臨床診断で歯周病ありと診断された人のうち、調査アンケート(自己申告)でも歯周病ありと申告した人の割合になります。一方、特異度とは、臨床診断で歯周病なしと診断された人のうち自己申告でも歯周病なしと申告した人の割合になります。したがって、感度、特異度ともに高い場合に、妥当性が良いことになります。一般的にC-統計量が70以上、感度と特異度を足した値が120以上であれば、自己申告による歯周病の妥当性が中程度以上あると考えられます。

今回の研究では、「軽度・中等度・重度の歯周病を含めた場合」、「中等度と重度の歯周病を含めた場合」、「重度の歯周病のみの場合」の3通りにおいて、それぞれ歯周病に関する自己申告による5つの質問と、歯科健診での歯科医師による臨床診断の歯周病との妥当性を検討しました。
また、調査アンケートの年齢、性別、教育歴、喫煙状況、糖尿病の有無、体格と5つの歯周病に関する質問で検討した結果、「重度の歯周病のみの場合」に各指標の値が最も高くなり、C-統計量は67.7、感度は65.2、特異度は61.1でした(図1)。

図1.歯周病の重症度別の自己申告と臨床診断による歯周病の正確さの指標

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この研究について

今回の結果から、調査アンケートの回答から得た自己申告による歯周病の正確さは、十分とは言えないことがわかりました。そのため、歯周病の診断には、歯科健診での歯科医師による臨床診断が必要であることが考えられました。しかし、疫学調査で歯周病を把握するために、多くの人を対象として歯科健診を実施することはとても困難です。重度の歯周病に関しては、本研究で使用した調査アンケートの内容を改善することで、自己申告の妥当性を高められる可能性があるため、今後、さらなる研究が必要です。

 

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