現在までの成果
詳細版食物摂取頻度調査票及びその短縮版による食物摂取状況推定の妥当性と比較
-次世代多目的コホート研究(JPHC-NEXT)プロトコル採用地域の中高年住民における検討-
食生活と健康との関連を明らかにする研究では、一人一人の食生活を正しく把握することが重要です。その方法の一つに食物摂取頻度調査票(FFQ)があります。前向きコホート研究では、長い間の食生活の変化を反映させるため、食物摂取量情報を追跡調査することが必要ですが、繰り返しの調査は、対象者の負担にもなります。そこで、ベースライン調査で使用した詳細な質問項目のFFQをもとに、追跡調査では、項目数を減らすことができないか検討しました。
この研究では、次世代多目的コホート研究(JPHC-NEXT)のベースライン調査で使用した、詳細版FFQ(172食品項目)の妥当性を、当該対象地域にお住いの中高年の方々において確認するとともに、追跡調査での使用を目的として開発した短縮版FFQ(66食品項目)の順位づけ妥当性を検証し、両FFQの比較可能性を明らかにしましたので、この研究結果を専門誌に報告しました(J Epidemiol, 2016年26巻420-432ページ)。
2012年11月~2013年12月に、JPHC-NEXTプロトコル採用地域である秋田県横手市、長野県佐久市および南佐久郡、茨城県筑西市、新潟県村上市・魚沼市に在住の40-74歳の男女240名が、年間で12日の秤量食事記録調査(実測値)の実施、詳細版FFQの回答を完了しました。2014年2月、これらの対象者に郵送により短縮版FFQを送付し、改めて回答を依頼しました。回答を得られた228名(男性98名、女性142名)を解析対象としました。
図1では、FFQによる推定摂取量を、12日食事記録による実測値と比較しています。平均値が近似している場合、摂取量の差は0%に近くなり、マイナスになると過小評価(少なめに推定)、プラスになると過大評価(大目に推定)とわかります。この結果、12日食事記録による、エネルギー及び栄養素等摂取量を比較基準とした場合、どちらのFFQでも過小評価された項目があり、特に聞いている項目の少ない短縮版FFQでは差は大きなものとなりました(男性、図1)。女性でもこの結果は同様でした。
また、12日食事記録による実測値の順位と、FFQによる推定値による順位が一致した場合に相関係数は1に近くなり、値が高いほど妥当性はよい(FFQで推定された摂取量の順位の評価は確からしい)といわれています。詳細版FFQによる栄養素項目推定値と実測値との相関係数の中央値は、男性で0.50、女性で0.43でした。短縮版FFQではそれぞれ0.46、0.44と、多くの栄養素項目で中程度かそれ以上の妥当性を示しました(男性、次頁図2-1)。また、両FFQによる推定値を比較したところ、栄養素項目ごとの相関係数が似た傾向を示しました(男性、図2-2)。女性でもこの結果は同様でした。すなわち、詳細版と短縮版との実測値を比較した順位付けの確からしさは、同じ栄養素項目であれば同程度であることを示しています。
更に、詳細版FFQと短縮版FFQの推定摂取量を、少ない順から5等分にわけ(五分位:Q1~Q5)、両者の一致の割合を比較した結果、男女ともエネルギー及び多くの栄養素項目で、同順位もしくは隣接するグループ(下図 青色)で一致した割合が約80%でした。最もはずれたグループ(下図 オレンジ色)に分類されたのは、ほぼ全ての栄養素において5%以下で、短縮版FFQによる推定値は、詳細版FFQとほぼ同様の順位を示し、比較可能なことがわかりました(図3)。
結論として、この詳細版FFQでベースライン調査を行って、追跡調査では短縮版FFQを用いても、多くの栄養素項目について摂取量の比較ができることが示されました
ご協力いただいた方々には、調査期間中の毎日、飲食物の全てを秤量して記録していただき、さらに、短縮版FFQへの追加調査にもご参加いただきました。皆様のご協力のおかげで、研究結果の信頼性が担保され、研究にご協力いただいた方々に、この場を借りて改めて深謝申し上げます。