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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

野菜・果物と肺がんリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。(研究班ホームページ:http://epi.ncc.go.jp/can_prev/
関連の強さについて、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、研究班のメンバーによる総合的な判断によって、科学的根拠としての信頼性について「確実」「おそらく確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価については、既存の機関が行ったレビューを引用することにしました。さらに、関連が「確実」あるいは「おそらく確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。
その研究の一環として、このたび、野菜・果物と肺がんについての評価の結果を専門誌に報告しました(Jpn J Clin Oncol 2011年41巻693-708ページ)。

果物は肺がんリスクを下げる可能性あり

肺がんの主な原因は喫煙ですが、それ以外の原因についてはまだよくわかっていません。世界がん研究基金と米国がん研究協会(WCRF/AICR)が共同で発表している「がん予防のための食物・栄養などに関する勧告」の第二版(2007)では、果物とカロテノイドの豊富な食物の肺がん予防効果は「ほぼ確実」、非でんぷん質の野菜は「可能性あり」(研究結果は限られているが示唆される)とされています。国際がん研究機構(IARC)における評価でも、メタアナリシスの結果、野菜と果物の摂取は肺がんを予防するとしています。
ただし、ベータカロテンのサプリメントを用いたいくつかの無作為化比較試験からは、肺がんリスクを下げないという結果が報告されています。また、最近の大規模コホート研究の結果も、野菜や果物の摂取は必ずしも肺がんリスクを下げるというものではありません。
今回、改めて、2009年までに報告された野菜・果物と肺がんリスクについて、日本人を対象とした疫学研究結果をまとめ、評価しました。野菜や果物といってもさまざまな角度でそれぞれの研究が行われています。その中で、3研究以上で相互に比較可能なテーマは緑黄色野菜と果物であり、野菜全体あるいはその他の種類の野菜については十分なデータがありませんでした。このテーマについて報告された疫学研究には6のコホート研究(表1)と、4つの症例対照研究(表2)がありました。緑黄色野菜について検討した3つのコホート研究と2つの症例対照研究のうち、弱い予防的な関連を示す結果がみられたのはコホート研究と症例対照研究でそれぞれ1つずつにとどまりました。一方、果物について検討した4つのコホート研究と4つの症例対照研究のうち、弱い予防的な関連を示す結果が2つのコホート研究と1つの症例対照研究で示されました。それらを検討した結果、日本では、果物は肺がんリスクを下げる可能性がある、そして野菜と肺がんリスクの関連を示す科学的根拠は不十分であるという結論になりました。
 

 表1 野菜・果物と肺がんの関連 コホート研究のサマリーテーブル

 

表2 野菜・果物と肺がんの関連 症例対照研究のサマリーテーブル

 

果物摂取のメタアナリシス

果物摂取と肺がんの関連については、いくつかの研究で予防的と報告されていましたので、その影響の大きさを調べるために、これらの研究をまとめてメタアナリシスを試みました。その結果、最も摂取量の高いグループでは最も低いグループに比べ、肺がんリスクは0.85倍であり、1日当たり1皿とるごとにリスクが0.92倍に減るという結果でした。

結論

生物学的なメカニズムを説明する研究結果があるものの、疫学研究の結果が不確定であることから、日本人においては、野菜によって肺がんのリスクが低くなるかどうかを決める科学的根拠が不十分であるという結論になりました。一方、果物摂取は肺がんリスクを下げる可能性があると評価しました。その理由として、果物については野菜に比べて予防的な関連を示す結果が多いことや、摂取データの妥当性がより高いこと、さらに最近の国際的な評価でも「可能性あり」とされていることが挙げられます。
今後の疫学研究で、より妥当性の高い食事調査の結果から野菜全体あるいは果物全体の摂取のデータを得て、肺がんとの関連を詳しく調べたエビデンスを用いて評価を行う必要があります。

 

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