トップ >科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 >現在までの成果 >肥満指数(BMI)と乳がんリスク

科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

肥満指数(BMI)と乳がんリスク

日本のコホート研究のプール解析

日本人のBMIと乳がんリスク

もともと乳がんは欧米に比べアジアでは少なかいがんですが、アジアの女性の体形の変化とともに乳がんの増加がみられます。肥満指数(BMI)は体重(kg)を身長(m)の二乗で割って算出され、肥満・痩せの指標として広く使われています。BMIと乳がんリスクとの関連については、これまでに主に欧米の研究結果から、閉経後女性ではBMIが大きいとリスクとなることが示され、逆に閉経前女性では予防的であるという弱い関連が報告されています。しかし、アジア人ではBMIと乳がんの関連がどのようになっているのか、特に閉経前女性ではどうなのかはよくわかっていませんでした。

 

そこで、今回、日本の8つのコホート研究の18万人以上のデータを併せたプール解析により、BMIと乳がんの関連を閉経状況別に推定し、その研究成果を専門誌において発表しました (Annals of Oncology  2014年25巻519-524ページ)。

 このプール解析に参加したのは、JPHC-IとJPHC-IIから成る多目的コホート研究、JACC研究、宮城県コホート研究、大崎国民健康保険コホート、3府県コホート研究(宮城)、3府県コホート研究(愛知)、そして高山コホート研究です。調査開始時の身長と体重からBMIを計算しました。14未満と40以上になった方は対象外とし、19未満、19以上21未満、21以上23未満、23以上25未満、25以上27未満、27以上30未満、30以上の7つのカテゴリーに区切りました。

 

 

BMIが大きくなると乳がんリスク上昇

 平均で約12年の追跡期間中に、1783人が乳がんになり、そのうち301人が閉経前乳がんでした。BMI23以上25未満を基準(ハザード比=1)に、BMIによる乳がんリスクを比べたところ、図1のようになりました。乳がんの発生率に影響を与えうるBMI以外の要因(年齢、地域、喫煙、飲酒、初潮年齢、初産年齢、出産数)について、それらの偏りが結果に影響を与えないように、ハザード比には統計学的補正が施されています。

すると、閉経前乳がんでも閉経後乳がんでも、BMIが大きくなると乳がんリスクは高くなるという傾向がみられました。閉経前乳がんのリスクはBMI最大群で2.25倍でした。また閉経後乳がんのリスクについては、BMIが小さい群ほど低く、大きい群ほど高くなる傾向がみられました。いずれも統計学的に有意なものです。その他の要因が結果に影響しないように調整したり、追跡開始から2年目までに発生した乳がんを除いたりして解析してみましたが、結果が大きく変わることはありませんでした。

 

BMIと乳がん

 

 

 

この研究について

この研究で示されたBMIと閉経後乳がんリスクとの関連は、これまでの研究結果と一致しています。この関連は、閉経後に肥満女性では卵巣よりもむしろ脂肪組織が主なエストロゲン供給源になるという性ホルモン関連のメカニズムで説明できます。閉経前乳がんについては、この研究ではBMIによるリスクの上昇がみられましたが、欧米では逆にBMI30以上の群や最大カテゴリーでのみリスク減少を示す研究結果などがあります。アジア人女性には極端に太っている人が少なく、予防的な効果がみられなかったのかもしれません。また、欧米とアジアに多い乳がんのタイプの違いや体質の違いなどによるのかもしれません。

 

日本で行われている大規模な前向き研究から18万人という対象者を得て、質の高いデータによるプール解析が行われました。いずれも長期追跡データがあり、乳がん発生以前に得られた情報によりBMIのカテゴリーを揃え、共通する他の要因について統計学的な補正を行うことができました。ただし、追跡期間中の閉経状況についての情報がなく、51歳以上で閉経と仮定したため、やや誤分類が生じた可能性があります。また、乳がんのタイプ(エストロゲンレセプター情報)が得られなかったので、その影響を推し量ることができませんでした。

 

今回の研究の結果、日本人女性において肥満は閉経後乳がんのリスクとなることが確認されました。また、閉経前乳がんでもBMIとの間に正の関連がみられ、アジア人女性については、BMIと乳がんの関連が欧米人女性とは異なる可能性が示されました。

 

 

 

上に戻る