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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

飲酒と全がんリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。(研究班ホームページ

関連の強さについて、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、研究班のメンバーによる総合的な判断によって、科学的根拠としての信頼性について「確実」「おそらく確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価については、既存の機関が行ったレビューを引用することにしました。さらに、関連が「確実」あるいは「おそらく確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。

その研究の一環として、このたび、飲酒と全がんについての評価の結果を専門誌に報告しました。 (Jpn J Clin Oncol. 2007年9月37巻692-700ページ

飲酒によって、日本人のがんリスクが確実に高くなる

日本では近年、酒類の消費量が増加し、大酒家の割合も増えています。飲酒習慣による健康への影響は、いまや公衆衛生上・予防医学上の重要な課題となっています。それぞれのがんだけでなく、がん全体についても、どの程度の飲酒量で、リスクがどの程度高くなるのかを見極め、提示する必要があります。

これまでに、主に欧米で実施された研究から飲酒と全がんの関連が報告されていますが、日本人に多いがんへの飲酒の影響が異なることや、日本人にはお酒に弱い体質を決める遺伝子タイプの人が多いことから、飲酒による健康影響が欧米と異なると考えられます。最近、日本のコホート研究で相次いで飲酒と全がんリスクの関連が検討され、科学的根拠が充実しました。

今回、改めて、2005年までに報告された飲酒習慣と全がんリスクについて、日本人を対象とした疫学研究結果をまとめ、評価しました。このテーマについて報告された疫学研究(同じ研究対象からの報告では、対象者数が多いまたは追跡期間が長い方を採用)には、6つのコホート研究がありました。そのうち3つは男女について調べてありましたが、残りの3つは男性のみでした。症例対照研究はありませんでした。それらを検討した結果、日本では、特に男性の大酒家では、飲酒によってがんリスクが確実に高くなるという結論になりました。

コホート研究

6つのコホート研究の結果をまとめました(表1)。男性については、すべての研究で飲酒者のがんリスクが高く、そのうち2つで「中程度」、残りの4つで「弱い」関連が見られました。最新の3つの報告では、はっきりとした量―反応関係、すなわち飲酒量または飲酒頻度が多くなるほどリスクが高くなる傾向が認められました。

一方、女性については、飲酒と全がんリスクの関連を示す研究はありませんでした。その理由としては、よく飲酒するグループに入る女性の人数が少ないために、評価ができなかったと考えられます。

表1 飲酒とがんの関連 コホート研究のサマリーテーブル

日本人の飲酒量とがんリスクとの関連

今回の総合評価の結果、日本では、特に男性の大酒家では、飲酒によってがんリスクが確実に高くなるという結論を得ました。一方、それぞれの研究について、アルコール摂取量とがんリスクとの関連を見ると、ある一定の量を超えるとリスクが高くなり始めるという「閾値」がありそうです。また、喫煙者でのみアルコール摂取量によってがんリスクが高くなることを示す研究があり、特に喫煙と飲酒の相互作用によるがんリスクが高まるというメカニズムが考えられます。さらに、日本人にはお酒に弱い体質を決める遺伝子タイプの人が多いために、飲酒の影響が欧米人よりも強く現れるかもしれません。

しかしながら、それぞれの研究でアルコール摂取量によるグループ分けの方法が異なるため、メタアナリシスの手法によってリスクを定量的に算出することができませんでした。次のステップとして、日本の主要なコホート研究のデータから共通するアルコール摂取量グループの全がんリスクを算出して持ち寄り、再解析を行っています。その結果、日本人ではどれくらいのアルコール摂取量でどれくらいがん全体のリスクが高くなるのか、節酒によってどれくらいがん予防効果が期待できるのかという詳細を明らかにする予定です。

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