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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

飲酒と胃がんリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。 (研究班ホームページ

関連の強さについて、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、研究班のメンバーによる総合的な判断によって、科学的根拠としての信頼性について「確実」「おそらく確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価については、既存の機関が行ったレビューを引用することにしました。さらに、関連が「確実」あるいは「おそらく確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。

その研究の一環として、このたび、飲酒と胃がんについての評価の結果を専門誌に報告しました。(Jpn J Clin Oncol. 2008年1月38巻8-25ページ

飲酒と胃がんリスクの関連は根拠が不十分

2007年の国際がん研究機構(IARC)における評価では、アルコール飲料はヒトに対し発がん性があると結論づけられており、部位別には口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、乳がんのリスク要因とされています。しかし、胃がんとの関連については、欧米を中心に疫学研究が数多くおこなわれているものの、結果は一致していません。

日本では、よく飲まれる酒の種類が欧米と異なること、アルコールを飲んですぐ顔が赤くなるタイプの人が約半数いるという体質の違いがあること、胃がんの原因であるヘリコバクター・ピロリ菌感染者の割合が高いことから、必ずしも欧米の結果が参考になるとは限りません。

今回、改めて、2007年までに報告された飲酒と胃がんリスクについて、日本人を対象とした疫学研究結果をまとめ、評価しました。このテーマについて報告された疫学研究には、コホート研究と症例対照研究がそれぞれ11件おこなわれていました。それらを検討した結果、日本では、飲酒と胃がんリスクの関連を示す科学的根拠が不十分であるという結論になりました。

コホート研究・症例対照研究

コホート研究、症例対照研究がそれぞれ11件おこなわれていました。コホート研究では11件のうち9件(表1)、症例対照研究では11件(表2)のすべてで、飲酒と胃がんリスクとの間に関連がみられませんでした。飲酒と胃がんリスクとの関連を部位別に検討した研究は3件のみで、そのうち1件のコホート研究で胃噴門部・上部3分の1でのリスク上昇を認めました。

表1 飲酒と胃がんの関連 コホート研究のサマリーテーブル

表2 飲酒と胃がんの関連 症例対照研究のサマリーテーブル 

日本人の飲酒と胃がんリスクとの関連

日本人の飲酒と胃がんリスクとの関連を調べた研究を調べると、飲酒量の評価を詳細に行った研究や、喫煙習慣・食事要因など胃がんリスクに影響をあたえる他の要因を考慮した研究、あるいは胃がんの発生部位を考慮したものが、これまでほとんどありませんでした。

欧米のいくつかの症例対照研究でも結果が一致していないものの、飲酒による胃噴門部がんのリスク上昇が報告されています。

以上から、これまでにおこなわれてきた疫学研究では方法論的な問題点があるため、日本人において、飲酒によって胃がんのリスクが高くなるというエビデンスは「十分ではない」という結論になりました。

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