トップ >科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 >現在までの成果 >緑茶と胃がんリスク

科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

緑茶と胃がんリスク

日本のコホート研究のプール解析

日本人の緑茶と胃がんリスク

「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。(研究班ホームページ

これまでに報告された緑茶と胃がんリスクについて、日本人を対象とした疫学研究結果をまとめ、評価しました。動物や細胞を使った実験では、緑茶の胃がん抑制効果を示すメカニズムが示されています。一方、初期の症例対照研究では胃がん予防効果を示す結果がありますが、思い出しバイアスのない前向きコホート研究からは、全体的な胃がんリスク減少を示す効果は確認されていません。さらに細かく見ると、男女別の分析で、女性でのみ胃がんリスク減少が示されるものもあり、また、部位別の分析では、胃の下部のがんで予防効果を示す研究もありました。しかし、個々の研究では、特に女性の胃の下部のがんの症例数が少ないこともあり、全体として一致した傾向を見出すことはできませんでした。

そこで、6つのコホートのデータを併せたプール解析による定量評価を行い、緑茶摂取量別の影響の大きさを推定し、その結果を専門誌に報告しました。(Gut. 2009年10月58巻1323-1332ページ

表1)統合解析に用いられた6つのコホート研究の特徴

女性では、緑茶をよく飲むグループで胃がんリスク低下

各コホートの合計約20万人のデータを用いて、緑茶摂取頻度によって4つのグループに分けました。平均で7.6年から11.5年の追跡期間中に、男性 2495人、女性1062人の胃がんが確認されました。1日1杯未満の最も少ないグループを基準にして、他のグループの胃がんリスクを比べました。

男性では、緑茶摂取頻度と胃がんリスクとの間には関連がみられませんでした。がんの発生部位によって、胃の上部と下部に分けて検討し、また喫煙者と非喫煙者で別々に検討しましたが、いずれも緑茶の摂取によるリスクの差は見られませんでした。

緑茶摂取頻度と胃がん(男性)

緑茶摂取頻度と胃がん(女性)

女性では、5杯以上/日のグループで、1杯未満/日のグループよりも胃がんリスクは21%低く、頻度が増すほどリスクが低くなる傾向がみられました。部位別には胃の下部のがんリスクでも同様に、5杯以上/日で30%低いことと、頻度が増すほどリスクが低くなる傾向が示されました。また、非喫煙者に限っても、同様の結果でした。上部のがんについては、1杯未満のグループと1杯以上のグループに分けて検討しましたが、統計学的に有意な差は見られませんでした。

この研究について

今回の研究では、緑茶摂取頻度以外の胃がんリスク要因(年齢、地域、喫煙、飲酒、米飯摂取、みそ汁摂取、コーヒー摂取、漬物摂取、緑黄色野菜摂取)を、緑茶摂取頻度によるグループ間でできるだけ同じになるように配慮して、緑茶と胃がんの関連について調べました。

その結果、女性では胃がんリスクの低下が示されましたが、男性では関連は見られませんでした。その理由として、緑茶摂取頻度が高いグループの摂取量が女性で多いかもしれないこと、喫煙率の高い男性では喫煙の影響が残ってしまっているかもしれないこと、ヘリコバクターピロリ感染率への緑茶摂取の影響に男女差があるかもしれないことが挙げられます。このうち喫煙の影響に関しては、今回の研究では男性の非喫煙者だけで分析をしてみましたが、胃がんリスクは変わりませんでした。緑茶と胃がんリスクの関連における男女差については、今後さらに研究を重ねる必要があります。

女性では、胃の上部のがんでは緑茶の予防効果が認められませんでした。その理由としては、温度の高い飲み物が胃の上部のがんリスクを高めるとすれば、そのために緑茶そのものの効果が打ち消された可能性があります。また、ピロリ菌感染が胃の下部のがんのリスクを高めるとすれば、緑茶のピロリ菌感染予防効果が胃の上部のがんには及ばないということも考えられます。

今回の研究では、研究開始時に緑茶の摂取習慣をたずね、その後の胃がん発生との関連を調べました。緑茶摂取についての長期的な習慣や、習慣の変化までは捉えているわけではありません。調査当時、胃が悪いために緑茶が飲めなくなっていた人などが含まれた可能性もありますが、研究開始初期の胃がんを除いても結果は変わりませんでした。

また、胃がんリスクであるピロリ菌感染を把握できていないために、その影響を調べることができませんでした。緑茶がピロリ菌感染抑制を通して胃がんリスクを低くしているとすれば、感染者と非感染者では結果が異なったかもしれません。

以上のような限界はありますが、総じて、日本の6つの大規模疫学研究のデータをプール解析した結果、緑茶が女性の胃の下部のがんのリスクを低下させる可能性が示されました。

上に戻る