東京胃がん検診追跡調査とは
研究の背景と目的
このたび、国立がん研究センターが東京都医師会、東京都地区医師会、東京都区市町村と共同して、「東京胃がん検診追跡調査」を実施することになりました。
胃がんは、日本において死亡率、罹患率ともに上位を占める疾患ですが、胃がんの90%以上がヘリコバクター・ピロリ感染に起因するものであることが明らかになっています。一方、日本のヘリコバクター・ピロリ感染率は減少しており、今後は一定年齢以上の全員を対象にした検診から、リスクによって層別化した有効かつ現実的な検診の導入に向けた取り組みが必要です。
近年、採血だけで胃がんのなりやすさを調べる「胃がんリスク検査(いわゆるABC検査)」は、胃がんのリスク判定を目的として波及しつつあります。この胃がんリスク検査は、ペプシノゲン法検査とヘリコバクター・ピロリ抗体検査を併用することで、胃がんのリスクを4つに分類することができます。
検診を受ける方の立場からはこの胃がんリスク検査は受検しやすく、さらにヘリコバクター・ピロリ感染の診断やヘリコバクター・ピロリ胃炎に対する除菌の保健適用拡大の波及に伴い、近年徐々に活用の動きが広がっています。胃がんリスク検査を一次検診として活用し、内視鏡検査を精密検査として運用することで、将来の対策型検診として注目されています。
しかし、この検査については対策型検診として導入するために必要な、長期間にわたる死亡率減少効果が分からないため、最新の胃がん検診ガイドラインでも公共の実施する検診として推奨されていません。対策型検診として導入するためには、死亡減少効果を検討した研究による根拠が必要になります。
この調査は、胃がん検診を受けられる方を長期間追跡することにより、「胃がんリスク検査」の死亡率減少効果を検証するものです。最終的に、胃がんリスク検査による胃がんリスク層別化の有効性についての側面と、医療経済的効果の側面から評価することで、日本における胃がん検診施策に役立つことが期待されます。
研究の方法
対象
区市町村で実施されている胃がん検診*を受けられる東京都内にお住まいの方。
*胃X線検査、胃内視鏡検査、および胃がんリスク検査
調査の流れ
- 1. 同意書へのご署名
- 本調査へのご協力は自由で、いつでも同意を撤回することができます。調査への参加に関わらず胃がん検診を受けることができます。
- 2. 検診
- 生活習慣などに関する簡単な問診票にご回答いただきます。
- 胃X線検診、胃内視鏡検診、胃がんリスク検診などの胃がん検診を受けます。
- 3. 追跡調査
- 郵送等により健康状態の確認のお手紙(追跡調査票)をご本人宛にお送りします。(約10年間)
- 参加者の同意のもと、事務局により胃がんの発症や死亡原因について追跡調査をさせていただきます。