トップ >科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 >現在までの成果 >野菜・果物と胃がんのリスク

科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

野菜・果物と胃がんのリスク

日本のコホート研究のプール解析

日本人の野菜・果物と胃がんのリスク

 胃がんの発生率には減少傾向がみられますが、まだ世界のがん死の第二位を占めています。特に野菜・果物摂取が胃がん予防に効果的であるという症例対照研究が数多くあることから、食事とがんの関連の研究を評価する世界がん研究基金と米国がん研究協会(WCRF/AICR)のプログラムにおいて、野菜(非でんぷん質のもの)と果物は胃がんを予防する可能性ありと評価されています。しかしながら、その後発表された5つのコホート研究の結果はばらばらであり、どちらとも言い難い状況になっています。また、症例対照研究からは胃がんのタイプ別に効果が異なる可能性が示されていますが、そこまで踏み込んだコホート研究の結果はほとんどありません。

 

 そこで、今回、日本の4つのコホート研究の19万人以上のデータを併せたプール解析により、野菜・果物摂取と胃がんの関連をタイプ別に推定し、その研究成果を専門誌において発表しました (Annals of Oncology  2014年25巻1228-1233ページ)。 

 

 このプール解析に参加したのは、JPHC-IとJPHC-IIから成る多目的コホート研究、JACC研究、宮城県コホート研究です。調査開始時の食事についてのアンケート調査の結果から、野菜・果物の摂取量を1日にとる野菜全体、緑黄色野菜、果物全体、野菜と果物全体の摂取量(g)を推定し、摂取量順に同じ人数になるように5つのカテゴリーに区切りました。なお、部位別、組織別解析では、多目的コホート研究と宮城県コホート研究のデータを用いました。

 

野菜・果物摂取量で胃がんリスクが減る可能性

 平均で約11年の追跡期間中に、2995人が胃がんになりました。胃がんに関わる他のリスク要因である喫煙、塩の摂取量、総エネルギー量の違いが結果に影響しないように調整して、野菜・果物の摂取量カテゴリーごとの胃がんリスクを比較しました。野菜全体の摂取量については、最小群に比べ最大群でリスクの低下がみられるようでしたが、統計学的に有意な低下ではありませんでした。果物全体については男女とも関連はありませんでした(図1)。また、野菜と果物の合計については、男性ではリスクの低下があるようでしたが、これも統計学的に有意ではなく、女性では関連がみられませんでした。

 胃がんのタイプ別の分析では、部位について下部2/3と上部に分け、がんの組織タイプについて分化がんと未分化がんに分けて検討しました。その結果、男性で野菜全体と緑黄色野菜の摂取量が最も多い群の胃がんリスクが最も少ない群と比べて統計学的有意に低く、それぞれ0.78と0.81で、摂取量が多いほどリスクが低い傾向がみられました(図2)。がんの組織タイプでは野菜・果物による差がみられませんでした。一方、女性では、がんの部位別には差がみられませんでしたが、果物全体の摂取量が多いほど分化がんのリスクが低下する傾向がみられました。

 

 

 

この研究について

 この研究では、野菜や果物のトータルや種類別の摂取量と胃がんの関連について、部位別、組織別に検討しました。男女とも、野菜の摂取量が最も多い群で胃がんリスクの低下がみられました。抗酸化作用のある成分に富む野菜・果物には胃がんの原因であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)などによる細胞のDNAへのダメージを抑える働きが期待されます。これまでのピロリ菌と胃がん部位別リスクとの検討では、下部胃がんにおいてより高いリスク上昇が確認されています。野菜がピロリ菌による発がんに予防的に働くために、よりピロリ感染との関連が強い下部胃がんリスクの低下がはっきりとみられたのかもしれません。女性では野菜摂取量が男性に比べて多く、リスクになるほど不足している人が少なかったために、部位別の胃がんのいずれともはっきりした関連がみられなかったのかもしれません。一方、女性では、果物全体の摂取により組織型別で分化型胃がんのリスクの低下がみられました。胃がんの組織型別の分析については、これまでの研究結果からもはっきりしたことは言えないため、今後さらに研究を進める必要があります。

 

 この研究では、日本で行われている大規模な前向き研究から19万人という対象者を得て、質の高いデータによるプール解析が行われました。いずれも長期追跡データがあり、胃がん発生以前に得られた情報により、共通する他の要因について統計学的な調整を行うことができました。ただし、ピロリ菌感染についての情報がありませんでしたが、日本での研究対象となった年代のピロリ菌感染率が9割以上であることから、感染の有無について調整することで大きく異なる結果にはならないと考えられます。また、野菜・果物の摂取量についてのデータは研究開始時のものであり、追跡中の変化を考慮した検討ができませんでした。胃がんの主な別の要因については調整を行いましたが、測定されていない要因の影響を除くことはできていません。

 

 今回の研究の結果、日本人において野菜摂取による胃がんリスクの低下が示唆されました。特に、男性において、下部胃がんのリスクが低下する可能性が示されました。

 

 

 

上に戻る