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科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究

糖尿病と肝がんのリスク

日本の疫学研究に基づく関連性の評価

日本の研究結果から、日本人のがん予防を考える

 

「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」研究班では、主要なリスク要因について、がん全般、および肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、肝がんなどのリスクとの関連を調べた国内の疫学研究を系統的に収集し、個々の研究についての関連の強さの確認と科学的根拠としての信頼性の総合評価を行っています。

関連の強さについては、「強い」「中程度」「弱い」「なし」の4段階で個々の研究を評価し、 科学的根拠としての信頼性については、研究班のメンバーによる総合的な判断によって「確実」「ほぼ確実」「可能性がある」「不十分」の4段階で評価するシステムとしました。その際、動物実験や作用機序に関する評価についても考慮しました。さらに、関連が「確実」あるいは「ほぼ確実」と判定された場合には、メタアナリシスの手法を用いた定量評価を行い、その影響の大きさについての指標を推定することにしました。

その研究の一環として、このたび、糖尿病と肝がんについての評価の結果を専門誌に報告しました(Jpn J Clin Oncol 2014年44巻986-999頁)。

 

糖尿病と肝がんリスクの関係に関する研究の経緯

他国と同様、日本での糖尿病有病率は上昇し続けています。糖尿病と、がんを含む主な慢性疾患との間に関連性がある可能性があり、臨床的および予防医学的観点からも重要視されてきました。糖尿病と肝がんの関係については、インスリンの過剰分泌によるIGFBP-1(インスリン様増殖因子結合タンパク質1型)の産生抑制や高血糖による酸化ストレスの上昇など、複数の生物学的メカニズムによって説明することが可能です。日本では原発性肝がんのうち90%以上を肝細胞がんが占めています。糖尿病患者における原発性肝がんリスクは、複数のメタアナリシスの結果から、糖尿病にかかっていない人々と比較した要約相対リスクが2〜4倍になると報告されています。これらのメタアナリシスの発表以降も、大規模プール解析を含む疫学データが蓄積されています。

そこで今回の研究では、肝炎ウィルス(HCV、HBV)感染およびアルコール摂取が肝がんの主要な原因となっている日本人において、糖尿病と肝がんの関係に関する最新の疫学的発見をレビューし、要約しました。

2014年3月までに報告された日本人を対象にした糖尿病と肝がんに関する疫学研究結果を系統的に収集し、19のコホート研究と7つのコホート研究を含む1つのプール解析(表1)、7つの症例対照研究(表2)の結果をまとめ、評価しました。

コホート研究の24件の相対リスク値のうち17件と、症例対照研究の10件の相対リスク値のうち9件において、糖尿病と肝がんの間に弱から強の正の関係がみられました。これは、糖尿病患者における肝がんリスク上昇があることを示唆します。また、性別や研究の種類別(コホート研究、または症例対照研究)の要約相対リスクでは、全体的にほぼ同様の結果がみられました。しかしながら、対象集団別の要約相対リスクは、一般集団や慢性肝疾患のある患者の集団よりも、糖尿病患者において行われた初期の研究で著しい上昇がみられました。コホート研究と症例対照研究を総合した要約相対リスクはRR=2.18、95%信頼区間1.78-2.69となり、先行研究と類似した結果となりました。ただし、症例対照研究における思い出しバイアスや選択バイアスの影響や、肝炎ウィルスの有無やアルコール摂取、喫煙状況といった潜在的交絡因子の調整不足の影響も考えられ、結果は注意深く解釈する必要があります。

 

結論

今回のレビュー結果および生物学的機序を総合的に検討した上で、日本人において糖尿病は原発性肝がんのリスクを上昇させることは「ほぼ確実」という結論になりました。糖尿病の発症予防や治療は、特に慢性肝疾患や肝炎ウィルス感染者といった高リスク群に属する人々にとって、肝がんの予防に有効であるかもしれません。

 

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