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国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究

東京近郊のがん検診受診者における食物摂取頻度調査票の妥当性

―「がん予防・検診研究センター検診受診者における食物摂取頻度調査」の成果―

 

「食生活」とがんなどの生活習慣病との関連を正しく検証するためには、1人1人の食生活をできるだけ正確に把握するような方法を開発する必要があります。食生活を正確に把握するためには、たとえば、それぞれの対象者に1年間毎日、全ての飲食物(おやつも、飲料も、調味料なども)をいちいち計量して記録をつけていただく実測が理想的ですが、手間がかかりすぎて現実的ではありません。そこで、実際には、食物摂取頻度調査票(FFQ)という簡単なアンケートを用いて、各個人の習慣的な摂取量を推定しています。そのアンケートから推定した摂取量の確からしさを検討する研究を「妥当性研究」と呼びます。FFQの妥当性研究では、ある研究の対象者の一部の方に、全ての飲食物の実測をお願いし、それぞれのアンケートによる摂取量と比較し、どの程度確かに把握できていたかを検討します。

 

今回の妥当性研究では、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの検診受診者を対象とした疫学調査で使用しているアンケート(食品群・栄養素等摂取量を推定する自記式のFFQ )の妥当性を検討しました。このFFQは多目的コホート研究(JPHC Study)のために開発されたアンケートを一部改変したもので、これまでに開発地域内の一部の対象者(主として地方の地域住民)において妥当性が検討されてきました。一方、食事などの生活習慣が異なると考えられる東京近郊の検診受診者集団での妥当性の検討はされていませんでした。この妥当性研究の結果を専門誌に報告しました(J Epidemiol, 2011年21巻447-458ページ)。

 

2004年1月から2006年7月の当センター検診受診者のうち東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県在住の40から69歳でがん、循環器疾患の既往がない方のうち、初回受診季節ごとに性・年齢階級別に無作為に対象者を抽出、郵送によるリクルートを行い、同意が得られ調査を完了した143名(男性69名、女性74名)を対象者としました。2007年5月より、週末を含む連続した4日間の秤量法食事記録調査(実測調査)を実施するとともに、改めてFFQへの回答を依頼しました。

実測調査による摂取量が多い人は、FFQによる摂取量も多く、逆に実測調査による摂取量が少ない人は、FFQによる摂取量も少ないという関係がみられた場合には、FFQによる摂取量は確からしいと考えられます。実測調査とFFQの2つの方法による摂取量の間の関連を表す指標に相関係数があり、このような場合に相関係数は1に近くなります。今回は相関係数を用いてFFQによる食品群・栄養素等摂取量推定値の妥当性を検討しました(図(右側)に、エネルギー摂取量についての相関の模式図を示す)。

また、一部の栄養素等項目について、FFQによる相関係数を、検診受診者と開発地域内(JPHC: 5年後調査, Cohort I)で比較しました(図)。すると、検診受診者における妥当性の相関係数の中央値は、FFQ開発地域内での妥当性とほぼ同等か上回っていました。

図. FFQによる推定摂取量と実測摂取量との相関係数

結論として、開発対象地域とは特徴が異なる東京近郊の検診受診者においても、同FFQから推定された栄養素等・食品群別摂取量の妥当性は、開発対象地域と同程度であり、多くの栄養素や食品群別摂取量について、FFQによる推定値によってグループ分けして、少ない群と多い群との間でがんのリスクなどを比較する疫学研究に利用可能であることが再確認されました。

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