国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究
イソフラボン摂取と大腸腺腫との関連
-「大腸腺腫の発生要因を探索する症例対照研究」の成果-
これまでの疫学研究で、大豆製品を摂取すると大腸がんのリスクが低下する傾向にあると言う知見が得られています。近年、大豆製品に含まれているイソ フラボンに注目が集まり、幾つかの研究で大腸がんとの関連が検討されていますが、一致した結果は得られていません。今回の研究では、イソフラボン摂取と大 腸の前がん病変である大腸腺腫との関連を検討し、その結果を専門誌に発表しました( British Journal of Cancer 2009年100巻1812-1816頁 )。
が ん予防・検診研究センターで行われている「大腸腺腫の発生要因を探索する症例対照研究」は、2004年2月~2005年2月の期間に大腸内視鏡検査を受け た3,212名のうち、大腸腺腫があった症例グループ782名と大腸腺腫がなかった対照グループ738名を対象としています。今回の解析では、イソフラボ ン摂取データの不備などにより102名を除き、症例グループ721名と対照グループ697名を対象としました。
イソフラボンの摂取で、大腸腺腫のリスクが低下
今回の研究では、イソフラボン摂取量が多いグループほど大腸腺腫のリスクが低下するという関連が見られました(傾向性p = 0.03)。対照グループがほぼ等人数になるように、イソフラボン摂取量によって4つのグループに分けると、イソフラボン摂取量が最も多いグループ (≥62.41mg/日)では最も少ないグループ(<24.77mg/日)と比べて、大腸腺腫のリスクが約30%低下していました(図1)。
イソフラボン摂取の効果は、女性でより明らか
男女別に見ると、イソフラボン摂取の効果は、女性でより明らかでした(男性の傾向性p = 0.18、女性の傾向性p = 0.03)。女性では、イソフラボン摂取量が最も多いグループ(≥62.41mg/日)では最も少ないグループ(<24.77mg/日)と比べて、 大腸腺腫のリスクが約50%低下していました(図2)。
イソフラボンの低摂取が大腸腺腫のリスク上昇と関連している可能性がある
図1および図2の結果では、イソフラボン摂取量が最も少ないグループに比べ、他のどのグループでもほぼ同様に大腸腺腫のリスクが低下しています。すなわち、イソフラボンをあまり摂取しないグループでは大腸腺腫のリスクが高いとも考えられます。
現在の研究では、イソフラボンが大腸がんやその前がん病変である大腸腺腫に対し予防的に作用するメカニズムについて十分に解明されていません。今回、イソフラボンの作用に男女差が見られた事も含めて、更なる研究が必要です。