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国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究

東京近郊のがん検診受診者におけるみそ汁の味付けと塩分摂取量の関係

東京近郊のがん検診受診者におけるみそ汁の味付けと塩分摂取量の関係

―「がん予防・検診研究センター検診受診者における食物摂取頻度調査」の成果―


高血圧や胃がんなどの生活習慣病予防のために、塩分や食塩の多い食品を控える必要があることが以前から指摘されています。「減塩」は、未だ十分に達成できていない重要な食生活の課題なのです。最近では、アメリカを中心とする海外では、塩分摂取量を減らすために加工食品中に添加される食塩を添加物として段階的に減らすよう規制することさえ議論されています。とはいえ、いくら薄味で提供したとしても、本人の好みで調節される余地があります。特に、アジア(日本も)では、家庭調理において食塩はもとよりみそやしょうゆなどで「好み」の濃さに味付けされ、みそ汁がよく飲まれるなど、調味料由来の塩分が多い点が欧米とは大きく異なっていると考えられます。

 

特定の家庭料理についての味付けの「好み」の段階が、実際の1日あたりの塩分摂取量と関連するか、例えば「薄味」と「普通」とではどの位の塩分摂取量の差がでるのかを検討した報告はこれまでに殆どありません。今回の研究では、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの検診受診者を対象として、アンケートの「みそ汁の味付けの濃さ」(自己申告)と、実際のみそ汁の塩分濃度、4日間の秤量食事記録法による摂取量、24時間尿中ナトリウム排泄量とを比較しました。この結果をアメリカ栄養学専門誌に報告しました(J Acad Nutr Diet, 2013年10月WEB先行公開)。

 

2004年1月から2006年7月の当センター検診受診者のうち東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県在住の40から69歳でがん、循環器疾患の既往がない方のうち、初回受診季節ごとに性・年齢階級別に無作為に対象者を抽出、郵送によるリクルートを行い、同意が得られ調査を完了した143名(男性69名、女性74名)を対象者としました。2007年5月より、週末を含む連続した4日間の秤量法食事記録調査(実測調査)・4日目の24時間蓄尿を依頼するとともに、アンケートへの回答と家庭で普段どおり調理したみそ汁の提供(塩分濃度測定)を依頼しました。

アンケートで回答したみそ汁の味付けと各ご家庭のみそ汁の塩分濃度の比較では、「濃い」味の方に回答した方が、実際のみそ汁濃度も高いことが解りました(図1)。1段階濃い味に移動するにつれてみそ汁一杯あたり約0.1gに相当する食塩の増加量でした。みそ汁の杯数が多くなると逆に食塩濃度は薄くなっていました。

 

24時間尿中ナトリウム排泄量も、4日平均の摂取量のいずれもみそ汁の味付けの濃さと関連していました。味付けが1段階濃い味に移動するにつれて凡そ食塩1g/日に相当する増加量と推算されました(図2)。また、みそ汁の味付けの濃さの方が、何杯飲むかよりも塩分摂取(排泄)量と強い関連を示しました。

 

また、みそ汁の味付けが濃いほど、インスタント食品や加工肉を食べる頻度が高い人、食卓でのしょうゆの使用頻度が高い人や麺のつゆを飲む量が多い人の割合が高いという関連がみられました(図3)。そこで、図2の関連についてこれらの要因で調整したところ、インスタント食品・加工肉の摂取頻度で調整しても変わりませんでしたが、食卓での調味料の頻度や麺のつゆをどの位飲むか、といった個人の任意な味付けや調節可能な部分に係る食行動で調整するとこの関連は大きく減弱しました。つまり、みそ汁の味付けが一日の食塩摂取を規定するのは、任意で調節可能な部分に係る(調味料に由来する)食行動によると考えられます。

 

 

 

 

この研究から、自己申告で、さらに特定の料理だけについてであるにも関らず「みそ汁の味付けの濃さ」と一日の食塩摂取量は関連しており(みそ汁による増加分を超えて)、この味付けの好みは、加工食品の摂取頻度よりむしろ、任意で調節可能な塩分関連行動によって説明されました。そして、みそ汁のような家庭の味の濃さの好みを4段階で1ランク下げることは、約1gの食塩減に相当することが示唆されました。日本人の食生活にあった減塩方法を考えることの大切さを伺わせる結果となりました。

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