国立がん研究センターのがん検診受診者を対象とした研究
内臓脂肪体積と大腸腺腫との関連
-「大腸腺腫の発生要因を探索する症例対照研究」の成果 -
肥満は大腸がんの確立した危険因子です。特に、内臓に脂肪がたまる内臓肥満が重要な影響を与えるとされています。内臓脂肪は直接測定するのが難しい ので、これまでの研究では、内臓脂肪体積を比較的よく反映する指標としてウエスト周囲径やウエスト・ヒップ比が用いられてきました。
今回の研究では、より正確な指標としてCTの画像データから計測した内臓脂肪体積を用いて、内臓肥満と大腸腺腫との関連を検討し、専門誌に発表しました。
( American Journal of Epidemiology, 2009年170巻1502-1511頁 )
大腸腺腫は良性の大腸腫瘍ですが、大腸がんへ進行する可能性が少なからずあります。従って、大腸腺腫の予防は大腸がんの予防につながると考えられています。
がん予防・検診研究センターで行われている「大腸腺腫の発生要因を探索する症例対照研究」は、2004年2月~2005年2月の期間に大腸内視鏡検 査を受けた3,212名のうち、大腸腺腫があった症例群782名と大腸腺腫がなかった対照群738名を対象としています。そのうち、今回の解析には、CT の画像データを入手できた症例群637名と対照群568名が含まれています。
内臓脂肪体積が増加すると大腸腺腫のリスクが上昇
内臓脂肪体積の中央値は男性3274㎤、女性1880㎤ と男女差があったため、まず男女別に解析を行いました。内臓脂肪体積と大腸腺腫との間には、男女ともに、統計学的有意な正の関連が見られました(男性の傾向性p = 0.001、女性の傾向性p = 0.01)。
対照群がほぼ等人数になるように、内臓脂肪体積によって4つのグループに分けた解析では、最高値のグループ(男性:4145㎤ 以上、女性:2575㎤ 以上)では最低値のグループ(男性:2296㎤ 未満、女性:1390㎤ 未満)と比較し、大腸腺腫のリスクが男女ともに約2倍高いことがわかりました。内臓脂肪体積には男女差が見られたものの、内臓脂肪体積と大腸腺腫との関連 は男女で違いが見られなかったため、図1では男女をまとめた結果を示しています。
BMIで層別化しても、内臓脂肪体積が増加すると大腸腺腫のリスクが上昇
次に、全身への脂肪蓄積を考慮し、体重(kg)を身長(m)の二乗で割り算して算出する肥満指数(BMI:body mass index)によるグループ別の解析を行いました。すると、BMIの高低に関わらず、内臓脂肪体積が大きい群で大腸腺腫のリスクが高いことが示されました (図2)。
内臓肥満は大腸がんの発生に重要な影響を与える可能性がある
CTの画像データを用いて内臓脂肪体積を測定した今回の研究においても、ウエスト周囲径やウエスト・ヒップ比を用いたこれまでの研究で報告されてき た内臓肥満と大腸腫瘍との関連が確認されました。内臓肥満は大腸がんの発生リスクを高める可能性があることを裏付ける結果となりました。