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現在までの成果

大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について

「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に行いましたアンケート調査にて生活習慣について回答して頂いた、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川という4地域にお住まいの、40〜59歳の女性約2万人の方々を、10 年間追跡した調査結果にもとづいて、大豆製品の摂取量、それから計算されるイソフラボンの摂取量と女性乳がん発生率との関係を調べました。その結果を、専門誌で論文発表しましたので、ここに概要を紹介します(Journal of National Cancer Institute 2003年95巻906-913ページ)。この研究は、世界で初めて前向き追跡研究で大豆製品やイソフラボンと乳がん発生率の減少との関係を示すことができた研究として注目を浴びています。

みそ汁の摂取が多いほど、乳がんになりにくい

アンケートの「みそ汁」、「大豆、豆腐、油揚、納豆」の項目を用いて大豆製品の摂取量を把握し、その後に発生した乳がんとの関連を調べました。図の縦軸は乳がんのなりやすさを示しています。食べる量の一番少ない人をとして、それ以上食べる人が何倍乳がんになりやすいかを示しました。たとえば1日3杯以上みそ汁を飲む人達で乳がんの発生率が0.6倍、つまり40%減少しているということになります。これらの値は、乳がんに関連する他の因子(初潮年齢や妊娠回数など)の影響を取り除いて計算しています。「大豆、豆腐、油揚、納豆」では、はっきりとした関連が見られませんでしたが、「みそ汁」ではたくさん飲めば飲むほど乳がんになりにくい傾向が見られました。

図1.みそ汁摂取と乳がん発生率との関係

図2.大豆、豆腐、油揚、納豆摂取と乳がん発生率との関係

イソフラボンは乳がん発生率減少と関連


アンケートの「みそ汁」、「大豆、豆腐、油揚、納豆」の項目から大豆イソフラボンの摂取量を計算し、乳がんとの関連を調べました。イソフラボンをあまり食べない人に比べ、たくさん食べる人のほうが乳がんになりにくいことがわかりました。

さらに、アンケート回答時に閉経していたか否かで分けてイソフラボンとの関連を調べました。閉経後の人達に限ると、イソフラボンをたくさん食べれば食べるほど、乳がんなりにくい傾向がより顕著に見られました。

図3.イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係

図4.閉経後女性におけるイソフラボン摂取と乳がん発生率との関係

大豆製品のバランスよい摂取を

今回の調査では、「みそ汁」と「イソフラボン」は、食べれば食べるほど乳がんになりにくいという関連が見られましたが、「大豆、豆腐、油揚、納豆」との間では関連がはっきり見られませんでした。しかし、これからみそ汁だけが乳がん発生率と関連があると考えるのは早急です。イソフラボンは植物性ホルモンといわれる物質で、化学構造が女性ホルモンに似ています。女性ホルモンは乳がんの発生を促進することが知られていますが、イソフラボンは女性ホルモンを邪魔することによって乳がんを予防する効果があるのではないかと考えられています。実際、動物実験などではその予防効果が示されていました。従って、乳がん予防効果がイソフラボンを介したものだとすると、みそ汁だけでなく、イソフラボンを含む大豆製品一般に、その予防効果があると考えるのが自然です。みそ汁をたくさん飲むと塩分を多く取ることになりますが、塩分の取りすぎは胃がんや高血圧などの他の生活習慣病の危険因子だといわれています。イソフラボンが乳がんを予防するかどうかはまだ証拠が十分とはいえませんが、イソフラボン摂取のためにはみそ汁だけでなく、大豆製品をバランスよくとることを心がけましょう。

乳がん発生率の国際比較と乳がんを防ぐ生活習慣

乳がんは欧米で多く、アジアで少ないことが知られています。アジアから米国へ移民した集団では乳がんが増えることが示されています。また、わが国でも都道府県別に見ると大都会で乳がん死亡率が高い傾向にあります。これらから、欧米と日本で大きく変わる生活習慣、特に食生活が乳がん発生率の高低と大きく関係するのではないかといわれてきました。その候補のひとつが大豆やそれに含まれるイソフラボンです。今回の研究では、世界で初めて前向き追跡研究で大豆製品やイソフラボンと乳がん発生率の減少との関係を示すことができました。今後さらに研究を進め、イソフラボンと乳がん発生率との関係を確認するとともに、大豆製品の中でもどのようなものがどう関連しているのかを明らかにしていく必要があります。いずれにしろ、日本の伝統的な食習慣をしていると乳がんになりにくいことは確かなようです。

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