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多目的コホート研究(JPHC Study)

腫瘍組織を用いる研究計画(2015年3月)

腫瘍組織を用いる研究計画のご案内

 

腫瘍組織を用いる研究の実施にあたっては、まず研究計画書を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象とした医学の研究における倫理的配慮等について厳密な審査を受けます。 国立がん研究センターにおける研究倫理審査委員会については、公式ホームページをご参照ください。本研究計画は、平成27年1月15日に承認されました(2014-214)。

【概要】 多目的コホート研究は、生活習慣とがんなどとの関連を明らかにするための大規模コホート研究であり、アンケートによる生活習慣の把握の後、がんの発生について、20年以上の追跡調査を行ってきました。本研究は、多目的コホート研究実施地域において、生活習慣に関するアンケートに答えた研究開始時点で40から69歳であった研究参加者約11万人を対象とします。

〇生活習慣、がん罹患については多目的コホート研究ですでに収集されている情報を用います。

〇がんの病理標本については、多目的コホート研究のがん罹患情報に基づき、共同研究機関から提供を受けます。

〇がんを分子生物学的解析によりサブタイプに分類し、リスク要因とがんとの関連がサブタイプにより異なるかを検討します。また、リスク・予防要因とがんの予後との関連が、がんのサブタイプで異なるかも検討します。

〇研究期間は、国立がん研究センターでの研究許可日から10年間を予定しています。

【意義】 がんをサブタイプに分類することにより、サブタイプごとのリスク要因を検討できます。たとえば、喫煙者で特定の遺伝子突然変異・エピジェネティック異常のある胃がんサブタイプが多ければ、喫煙から胃発がんにいたるメカニズムについて考察できます。

大規模なコホート研究で、がんを分子生物学的な解析によりサブタイプに分けてリスク要因との関連を検討するのは、日本において初めての試みであり、がん発生のメカニズムを明らかにし、日本人のがん予防につながるエビデンスを提示できる可能性があります。 

【目的】 多目的コホート研究参加者において、1)生活習慣などのリスク・予防要因とがんとの関連、ならびに、2)リスク・予防要因とがんの予後との関連が、がんのサブタイプで異なるかを検討します。

【方法】 <研究デザイン>コホート研究 

<対象者> 多目的コホート研究の対象地域である岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾(以上1990年開始のコホートⅠ)、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田(以上1993年開始のコホートⅡ)の11保健所管内に、研究開始時点で居住していた、地域住民約14万人のうち、生活習慣に関するアンケート調査票への回答が得られた約11万人の方。ただし、本研究の追跡開始後に判明した不適格者(外国人、対象地域外に居住、年齢不適判明者)、本研究での資料の利用を拒否した方は対象から除外されます。

 <本研究に利用される多目的コホート研究の資料>

1)生活習慣に関するアンケート調査の情報

2)追跡調査の情報

3)健診情報、血漿試料を分析することにより得られた情報(遺伝子多型などのゲノム情報は除きます)

 <病理標本の収集、解析>

多目的コホート研究で把握しているがん罹患情報にもとづき、共同研究機関から国立がん研究センターに、がんの病理標本の提供を受けます。がんの遺伝子変異、DNAのメチル化、遺伝子増幅・遺伝子発現解析によりがんを分類します。対象とするがんの部位は、胃がん、大腸がん(結腸、直腸がん)、肺がん、前立腺がん、乳がんとします。

 

◆個別の研究計画について

腫瘍組織を用いる研究計画の枠内で行われている研究計画

研究のテーマをクリックすると、研究計画の概要がご覧になれます。いずれも、検査結果を誰のものかわからないように匿名化して、各グループごとの検査データの傾向を比較する研究です。ひとりひとりの検査結果を取り扱うことはありませんが、ご自分の試料が研究の対象になると思われるが、以下のいずれかの研究には使用して欲しくないとお考えになる方は、その旨をJPHC 研究事務局までお伝えくださいますよう、お願いいたします。

なお、研究への使用の拒否の意思を表明されても、診療の機会などで、いかなる意味においても不利益をこうむることはありません。

 

No 研究のテーマ 研究許可日
1 胃がんを対象にしたコホート研究
2 大腸がんを対象にしたコホート研究

 ☆ IRB No. 2014-214 承認日: H27年1月15日

 



1.「胃がんを対象にしたコホート研究 」

【目的】

喫煙などすでに報告されている胃がんのリスク要因と胃がんとの関連性が、分子異常(がん組織の遺伝子突然変異・エピジェネティック異常)により胃がんをより細かく分類した場合に、異なるかどうかを検討します。

【方法】

‐対象(人数): 秋田県横手地域で1990年に生活習慣アンケートに回答した40~59歳の方のうち、がん既往のない約12,000名を本研究の対象とします。腫瘍組織の収集は、対象者の追跡調査により把握した胃がん症例約500例について行います。 

‐分析項目(使用検体): 胃がんにおける遺伝子突然変異・エピジェネティック異常(胃がん標本から抽出したDNA)

‐分析方法: 胃がんにおける遺伝子突然変異・エピジェネティック異常のマーカーにより胃がんをサブタイプに分類します。

‐研究方法/解析方法: コホート研究デザインで、喫煙などのリスク要因と胃がん発生リスクとの関連を、サブタイプ別に検討します。 

【意義】

これまでのコホート研究では、リスク要因が、がんの発生にどのように働いているか直接調べることができませんでした。胃がんにおける特定のゲノム・エピゲノム異常が、がんになる前のリスク要因と関連していれば、発がんにいたるメカニズムを考察する上で有用な知見となります。

共同研究機関: 国立がん研究センター研究所、平鹿総合病院

主たる研究費: 厚労科研費委託費

 



2.「大腸がんを対象にしたコホート研究」

【目的】

大腸がんのリスク要因とされる喫煙や肥満、予防要因とされる葉酸やビタミンDなどとの関連が、大腸がん組織に見られる分子異常(遺伝子の突然変異、エピジェネティックな異常、それらの結果もたらされるタンパク質の質的・量的変化)によって大腸がんを細かく分類(サブタイプに分類)した場合に、異なるかどうかを検討します。

【方法】

‐対象と人数:
1990年の時点で、秋田県横手地域か沖縄県中部地域に在住していた40~59歳の方々のうち、多目的コホート研究の生活習慣アンケートに回答し、がん既往のない約23,000名を本研究の対象とします。腫瘍組織が収集された大腸がん症例約560例について、大腸がん組織に見られる分子異常の分析を行います。

‐分析項目・分析方法・使用検体など:
大腸がん組織に見られる分子異常として、遺伝子の突然変異、エピジェネティックな異常、それらの結果もたらされるタンパク質の質的・量的変化などを分析します。大腸がん組織に見られる遺伝子の突然変異やエピジェネティックな異常は、腫瘍組織から抽出されるDNAを用いて分析します。大腸がん組織に見られるタンパク質の質的・量的変化は、腫瘍組織を染色することで分析します。

‐研究方法/解析方法:
コホート研究デザインで、喫煙・肥満などのリスク要因や葉酸・ビタミンDなどの予防要因と大腸がんとの関連を、大腸がん組織に見られる分子異常に基づき大腸がんのサブタイプ別に検討します。

【意義】

従来のコホート研究では、リスク要因や予防要因が、がんの発生にどのように影響を及ぼしているか詳細に調べることができませんでした。大腸がんのリスク要因や予防要因が、大腸がん組織に見られる特定の分子異常(遺伝子の突然変異、エピジェネティックな異常、それらの結果もたらされるタンパク質の質的・量的変化)と関連していれば、大腸発がんのメカニズムを考察する上で有用な知見となります。

共同研究機関: 国立がん研究センター研究所、平鹿総合病院(秋田)、横手病院(秋田)、中部病院(沖縄)、中頭病院(沖縄)

主たる研究費: 日本医療研究開発機構(AMED)委託費

 


 

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