多目的コホート研究(JPHC Study)
2018/08/24 アクリルアミド摂取量と子宮体がん・卵巣がん罹患との関連について-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果-
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、アクリルアミド摂取量と子宮体がん・卵巣がん罹患との関連についての研究の結果が発表されました。
この論文の状況は以下の通りです。
Cancer Sci. 2018 Jul 31. doi: 10.1111/cas.13757. [ウェブ先行公開]
アクリルアミド摂取量と子宮体がん・卵巣がん罹患との関連について
今回の研究では、平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に40~69歳だった女性約4万7千人の対象者を、平成25年(2013年)まで追跡した調査結果にもとづいて、アクリルアミド摂取量と子宮体がん・卵巣がん罹患との関連を調べました。
アクリルアミドは、食品を120℃以上の高温条件下で加工・調理すると、化学反応を起こすことなどによって生成されることのある物質で、食品安全員会によると、発がん性の懸念がないとはいえない、とされています。我々は、5年後調査時のアンケートの回答から、食事によるアクリルアミドの摂取量を推定し、アクリルアミド摂取量について、対象者を3つのグループ(低、中、高)に分けて、その後の子宮体がん・卵巣がん罹患を比較しました。
その結果、アクリルアミド摂取量が多いほど子宮体がん罹患リスクが下がるという関連がみられました。本研究の対象集団では、コーヒーがアクリルアミド総摂取量の24%を占める主要な摂取源であり、また、コーヒーが子宮体がんのリスクを下げることが多くの疫学研究から報告されています。そこで、コーヒー摂取量の影響を統計学的にのぞいたところ、関連はみられなくなりました。卵巣がんについては、アクリルアミド摂取量との間に統計学的有意な関連はみられませんでした。
本研究の結果から、アクリルアミド摂取量と子宮体がん・卵巣がん罹患との間に関連がなかったことが示されました。また、コーヒーは子宮体がんのリスクを下げることが多目的コホート研究から報告されており、本研究においてもアクリルアミド摂取量が多いほど子宮体がんリスクは下がりましたが、コーヒー摂取量の影響を統計学的に調整すると関連はみられなくなりました。このことから、アクリルアミド摂取量とがん罹患の関連には、アクリルアミドの摂取源の違いも結果に影響を与えることがわかり、本研究においては、コーヒーに含まれる他成分による子宮体がんのリスク低下の影響は、アクリルアミドの発がんの影響があったとしても、それを上回ることが示唆されました。
詳しくは、ホームページに掲載される概要版をご覧ください(2018年08月24日公開)。