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多目的コホート研究(JPHC Study)

2005/1/17 喫煙と自殺の関係

多目的コホート(JPHC)研究から、たばこと自殺リスクについて検討した論文が発表されました。( 「アナルズ・オブ・エピデミオロジー」in press ・日本疫学会学術総会(滋賀県大津市)にて2005年1月22日ポスター発表予定)

その結果、たばこを吸うグループでは吸わないグループに比べて自殺リスクが高く、1日あたりの本数が多いグループは特にハイリスクであることが確認されました。

たばこと自殺についての、アジアで初めての前向き研究結果

日本は、自殺による死亡率が世界中で最も高い国の一つに数えられます。1998年以来、毎年3万人以上が自殺で亡くなっており、これは交通事故死の3倍以上にものぼることが知られています。その中でも、日本では40 - 50代の男性に自殺が多いという傾向がみられます。働き盛りの世代の自殺は、本人にとってはもちろん、家族にとっても国にとっても早すぎる死に他なりません。自殺予防は、緊急に取り組むべき課題の一つなのです。

日本は、また、男性の喫煙率が世界中で最も高い国の一つです。喫煙者に自殺が多いという研究結果は、これまでにも報告されていますが、そのほとんどは欧米の、しかも一般住民ではない特定の集団を対象に行われた研究です。多目的コホート研究は、日本の住民集団を対象に行われています。今回の研究は、たばこと自殺の関係を検討した前向き研究結果としては、アジアからの初めての報告になります。

前向き研究の「前向き」というのは、時間の方向を示します。つまり、対象者にあらかじめ喫煙状況などリスク要因を調査(ベースライン調査)しておいて、その後、対象者に起こる死亡や発病などの出来事を追跡調査する疫学研究の方法です。すでに病気にかかってしまった人に対して過去のリスク要因を調査する「後ろ向き研究」よりも、信頼性の高い結果が得られます。

1日あたりの本数が多いほど、自殺リスクが高い

まず、たばこを吸うグループでは、吸わないグループに比べて自殺リスクが高そうであることがわかりました。さらに、たばこを吸うグループの中で、1日当たりの本数についてグループ分けして検討してみました。すると、本数が多ければ多いほど自殺リスクが高くなるというはっきりした傾向があらわれました。一方、たばこを吸った年数が長くても、自殺リスクには関係ありませんでした。

この研究を報告した岩崎基・国立がん研究センター予防研究部研究員によれば、たばこやニコチン依存によって、自殺と直接関連するうつ病のリスクが高くなるのではないかということも考えられますが、たばこがどのように自殺リスクと関わっているのかは、まだよくわかっていません。また、禁煙すればよいのかという問題ですが、多目的コホートでは禁煙してからの経過年数につれて自殺リスクが低くなるという傾向はみられませんでした。どちらも、今後の研究課題となります。

自殺を予防するうえで大切なこととして、自殺リスクの高いグループを知るということがあげられますので、こういった観点からは、今回の研究は日本における自殺予防の手がかりを与えたとも言えます。今回の研究によって自殺のハイリスクグループとして浮かび上がった「たばこの本数が多い中年男性」は、もともと肺がんをはじめさまざまな病気のハイリスクグループですから、体の健康に加えて、心の健康にも注意を払う必要があると言えるでしょう。

詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。

また、詳細版はこちらからご覧いただけます。

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