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多目的コホート研究(JPHC Study)

法律的・倫理的基盤と個人情報のお取扱いについて

平成17年4月1日より「個人情報の保護に関する法律」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」をはじめとする個人情報保護関係の諸法律が全面施行されました。

多目的コホート研究では、研究に参加いただいている皆様の個人情報を適正に保護することが、研究活動の基本であり、社会的責務であると考えています。

この機会に改めて個人情報の保護の重要性を確認し、個人情報保護に関する諸法律・条例及び「疫学研究に関する倫理指針(平成14年6月17日公示、平成16年12月28日全部改正)」を遵守し、引き続き、個人情報の適切な取り扱いに努めます。

 

1.多目的コホート研究の法律的・倫理的基盤

多目的コホート研究は、国民の公衆衛生の向上と健康の増進に必要な科学的根拠をつくることを目的とした学術研究です。

本研究は、「健康増進法」(第16条)において国及び地方公共団体に課された“生活習慣病の原因や発生状況の把握”という責務を直接の法基盤とし、さらに、「憲法」(第25条)「地域保健法」「医師法」(第1条)に定められた“公衆衛生の向上と増進”という、国及び地方公共団体の責務を推進するものとして実施しています。

学術研究の目的で個人情報を取り扱う学術研究機関については、個人情報取り扱い事業者の義務等の適用除外(第50条1項)「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」第2章行政機関における個人情報の取扱いの適用除外(第8条2項)「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」第2章独立行政法人等における個人情報の取扱いの適用除外(第9条2項)となり、 また、その学術研究機関に対して個人情報を提供する行為については、「個人情報の保護に関する法律」第4章個人情報取り扱い事業者の義務等における主務大臣の権限の行使の制限(第35条1項)によって保護されます。 さらに公衆衛生の向上のために必要である場合には、「個人情報の保護に関する法律」利用目的による制限(第16条)、第三者提供の制限(第23条)の適用除外に該当します。

しかしながら、多目的コホート研究では、個人情報保護に関する法律を受けて改正された「疫学研究に関する倫理指針」に準拠して、対象者の皆様の個人情報について,適正な取り扱いを厳格に実施しています。

多目的コホート研究にかかわる調査の計画は、この「疫学研究に関する倫理指針」に則り、国立がん研究センターが設置する倫理審査委員会において、研究対象の皆様の不利益にならないか、その目的や方法が科学的に妥当であるか、その成果が国民の公衆衛生の向上及び健康の増進に寄与し得るものか、などの点について審査され、承認を受けました(承認番号13-21)。この倫理審査委員会は医学研究者や国立がん研究センター職員以外にも、法律家や一般の方等により構成されており、第三者機関としての役割を果たしています。

 

2.多目的コホート研究における個人情報の取扱い

多目的コホート研究にかかわる調査は、研究班の担当者が責任を持っておこなっています。また、得られた皆様の記録や情報は、氏名・住所・生年月日などの個人が識別できる情報を、他の健康や生活習慣に関する情報と切り離して別に管理すると同時に、組織的、人的、物理的、技術的安全管理措置を通じて、万全な体制のもとに保護してします。

なお、個人情報の保護に関連して、従来から、研究班の研究者や保健所職員のうち,医療従事者については「刑法」(第134条)をはじめ、「保健師助産師看護師法」(第42条の2、第44条の3)で、公務員については「国家公務員法」(第100条)「地方公務員法」(第34条)で、罰則つきの守秘義務が課されています。

さらに、多目的コホート研究の最も基本的かつ重要な決まり事として、調査により得られた情報は、多目的コホート研究の目的以外には一切使用することはありません。加えて、多目的コホート研究では、約14万人という対象者の皆様の情報は、個人が特定できる情報とは切り離して集団として分析し、この集団分析の結果を学会や論文で公表していますので、対象者個人のお名前がわかることは決してありません。

 

3.収集している個人情報

多目的コホート研究において収集している個人情報は以下の通りです。

  1. 対象者の氏名、性、生年月日、住所
  2. アンケート調査の回答
  3. 提供を受けた健康診査の結果
  4. 健康診査の際に提供を受けた血液
  5. 異動先の住所(市区町村の許可に基づく住民票照会)
  6. がん・循環器疾患の罹患情報(医療施設からの提供)
  7. 死亡届及びそれに添付された死亡診断書などの内容(総務省の許可による死亡票などの閲覧)

われわれは、これらの個人情報を対象者の皆様から偏りなく収集することによってはじめて、国民の公衆衛生の向上と健康の増進に必要な科学的根拠をつくる、という研究目的を達成できるものと考えています。

 

4.多目的コホート研究にかかわる法律の抜粋

健康増進法:

第三章 国民健康・栄養調査等

(生活習慣病の発生の状況の把握)
第十六条 国及び地方公共団体は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の生活習慣とがん、循環器病その他の政令で定める生活習慣病(以下単に「生活習慣病」という。)との相関関係を明らかにするため、生活習慣病の発生の状況の把握に努めなければならない。

憲法:

第二十五条

  • 1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  • 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

地域保健法:

第一章 総則

第二条 地域住民の健康の保持及び増進を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、我が国における急速な高齢化の進展、保健医療を取り巻く環境の変化等に即応し、地域における公衆衛生の向上及び増進を図るとともに、地域住民の多様化し、かつ、高度化する保健、衛生、生活環境等に関する需要に適確に対応することができるように、地域の特性及び社会福祉等の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に推進されることを基本理念とする。
第三条  市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、当該市町村が行う地域保健対策が円滑に実施できるように、必要な施設の整備、人材の確保及び資質の向上等に努めなければならない。

  • 2 都道府県は、当該都道府県が行う地域保健対策が円滑に実施できるように、必要な施設の整備、人材の確保及び資質の向上、調査及び研究等に努めるとともに、市町村に対し、前項の責務が十分に果たされるように、その求めに応じ、必要な技術的援助を与えることに努めなければならない。
  • 3 国は、地域保健に関する情報の収集、整理及び活用並びに調査及び研究並びに地域保健対策に係る人材の養成及び資質の向上に努めるとともに、市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。

第三章 保健所

第六条 保健所は、次に掲げる事項につき、企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行う。

  •   一   地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項
  •   二   人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
  •   三   栄養の改善及び食品衛生に関する事項
  •   四   住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
  •   五   医事及び薬事に関する事項
  •   六   保健師に関する事項
  •   七   公共医療事業の向上及び増進に関する事項
  •   八   母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
  •   九   歯科保健に関する事項
  •   十   精神保健に関する事項
  • 十一  治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
  • 十二  エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
  • 十三  衛生上の試験及び検査に関する事項
  • 十四  その他地域住民の健康の保持及び増進に関する事項

 

第七条 保健所は、前条に定めるもののほか、地域住民の健康の保持及び増進を図るため必要があるときは、次に掲げる事業を行うことができる。

  •   一   所管区域に係る地域保健に関する情報を収集し、整理し、及び活用すること。
  •   二   所管区域に係る地域保健に関する調査及び研究を行うこと。
  •   三   歯科疾患その他厚生労働大臣の指定する疾病の治療を行うこと。
  •   四   試験及び検査を行い、並びに医師、歯科医師、薬剤師その他の者に試験及び検査に関する施設を利用させること。

医師法:

第一条 医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

個人情報の保護に関する法律:

第四章 個人情報取扱事業者の義務等

第一節 個人情報取扱事業者の義務 (利用目的による制限)

第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。

  • 三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。 (第三者提供の制限)

第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

  • 三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。 (主務大臣の権限の行使の制限)

第三十五条 主務大臣は、前三条の規定により個人情報取扱事業者に対し報告の徴収、助言、勧告又は命令を行うに当たっては、表現の自由、学問の自由、信教の自由及び政治活動の自由を妨げてはならない。

2 前項の規定の趣旨に照らし、主務大臣は、個人情報取扱事業者が第五十条第一項各号に掲げる者(それぞれ当該各号に定める目的で個人情報を取り扱う場合に限る。)に対して個人情報を提供する行為については、その権限を行使しないものとする

第五章 雑則

(適用除外)
第五十条 個人情報取扱事業者のうち次の各号に掲げる者については、その個人情報を取り扱う目的の全部又は一部がそれぞれ当該各号に規定する目的であるときは、前章の規定は、適用しない。

  • 三 大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者 学術研究の用に供する目的

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律:

第二章 行政機関における個人情報の取扱い

第八条  行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。

  • 一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。
  • 二 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
  • 三 他の行政機関、独立行政法人等又は地方公共団体に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
  • 四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

 

独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律:

第二章 独立行政法人等における個人情報の取扱い

第九条  独立行政法人等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

2 前項の規定にかかわらず、独立行政法人等は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。

  • 一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。
  • 二 独立行政法人等が法令の定める業務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
  • 三 行政機関(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する行政機関をいう。以下同じ。)、他の独立行政法人等又は地方公共団体に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
  • 四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

 

刑法:

第十三章 秘密を侵す罪
(秘密漏示)
第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

保健師助産師看護師法:

第四章 業務

第四十二条の2 保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなった後においても、同様とする。

第五章 罰則

第四十四条の3 第42条の2の規定に違反して、業務上知り得た人の秘密を漏らした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

国家公務員法:

第七節 服務
(秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

地方公務員法:

第六節 服務
(秘密を守る義務)
第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

  • 2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
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