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多目的コホート研究(JPHC Study)

成人期における体重変化と糖尿病との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった方々のうち、ベースラインおよび研究開始から5年後に行なった調査時に糖尿病やがん、循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約5万人を、5年間追跡した調査結果にもとづいて、20歳からの体重変化およびベースラインから5年後調査までの5年間の体重変化と糖尿病発症との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します(J Epidemiol Community Health.2011 Dec;65(12):1104-10)。

肥満は糖尿病の重要な危険因子であり、欧米に比べ肥満者の少ない日本においてもBMIと糖尿病発症との量-反応関係が報告されています。また、若年成人期からの体重増加や中年期の体重増加により糖尿病のリスクが高まることが報告されています。しかし、いつの時期の体重増加が糖尿病のリスクに大きく影響するのか、あるいは体重減少によって糖尿病のリスクが低下するかといった点については明らかでありません。そこで、若年成人期からの体重変化および中年期における体重変化とその後の糖尿病発症との関連について検討しました。

20歳から体重が5kg以上増加した群で糖尿病発症のリスクが上昇

若年成人期から中年期までの体重変化の指標として、研究開始時の自記式調査票のデータを用い、20歳からベースライン調査までの体重変化を算出しました。対象者を①5kg以上減少、②5kg未満の変化、③5kg以上増加の3つのグループに分類し、5年後調査以降の5年間における糖尿病発症(男性578人、女性411人)との関連を調べました。糖尿病の発症は、研究開始10年後に行った自記式調査で、上記追跡期間内に糖尿病と診断されたことがある場合としました。
男女ともに、若年成人期から5kg以上体重が増加した群は変化が少なかった群(5kg未満)に比べて糖尿病のリスクが2.6倍に上昇していました(図1)。一方、体重減少と糖尿病リスクとの関連は認めませんでした。

図1 20歳からベースライン(平均年齢50.6歳)における体重変化と糖尿病発症のリスク

女性では中年期の5年間に体重が5kg以上増加した場合でも糖尿病のリスクが上昇

中年期における体重変化の指標として、ベースライン調査から5年後調査までの体重変化を計算しました。それによって対象者を①5kg以上減少、②2.5~4.9㎏減少、③2.5kg未満の変化、④2.5~4.9㎏増加、⑤5kg以上増加に分類し、その後の5年間に発症した糖尿病との関連を調べました。
女性では、中年期に体重が5kg以上増加した群は変化が少なかった群(2.5㎏未満)に比べ糖尿病発症のリスクが1.8倍に上昇していました(図2)。そのような関連は男性にはみられませんでした。また、体重減少と糖尿病リスクとの関連は男女ともに認めませんでした。

図2 中年期5年間における体重変化と糖尿病発症のリスク

今回の研究では、男女ともに20歳から中年期までの体重増加が糖尿病発症と関連しており、さらに女性では中年期の体重増加でも糖尿病のリスクが上昇するという結果が得られました。若年成人期以降の体重増加によって糖尿病リスクが顕著に高まることが男女ともに観察されたことより、20歳以降に大幅に体重が増えないよう気をつけることが糖尿病予防に大切であると考えられます。
本研究では体重減少と糖尿病発症との関連を認めませんでした。この結果については研究の方法上、解釈には注意が必要です。まず、今回の研究では体重が減った理由までは把握していませんので、ダイエットなどで意図的に減らした場合と自然に減った場合とを区別することができません。したがって、減量に取り組むことで糖尿病のリスクが低下するかどうかについては、別の研究を待たなければなりません。また、本研究の参加者は一般住民であり、その多くは健康な方であると考えられます。耐糖能障害(糖尿病ではないが血糖が高めの状態)がある人を対象に行われた無作為比較試験(効果を検証する上で信頼性が高い研究方法)では、生活習慣に取り組み減量することで糖尿病発症のリスクが低下することがわかっています。境界型糖尿病や糖尿病の方は体重管理が重要ですので、医師の指示に従ってください。

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