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現在までの成果

血中性ホルモン濃度と前立腺がん罹患との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2010年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男性約4万3千人の方々を平成17年 (2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて、血中性ホルモン濃度と前立腺がん発生率との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。( Cancer Sci. 2010年101巻2652-7ページ

テストステロンなどの性ホルモンは前立腺の発育に不可欠な一方、前立腺がんの危険因子の一つと考えられています。ところが、これまで行われてきた多くの疫学研究では、性ホルモンと前立腺がんの間に明確な関連を示すものはありませんでした。しかし、これらの研究は主に欧米からの報告であり、性ホルモン濃度は、人種、体格などで異なることが知られています。さらに、大豆やイソフラボンは前立腺がんのリスクを下げる可能性が指摘されていますが、それらの食品を摂取すると血中ホルモン濃度が変動することも報告されています。
しかしながら、これまでに、欧米人とは体格も大豆・イソフラボン摂取量も異なる日本人での研究はほとんど行われていません。そこで、私たちは、日本人における、血中性ホルモン濃度と前立腺がんとの関連を検討しました。

保存血液を用いた、コホート内症例対照研究

多目的コホート研究を開始した時期(1990年から1995年まで)に、一部の方から、健康診査等の機会を利用して研究目的で血液を提供していただきました。今回の研究対象に該当し保存血液のある男性約1万4000人のうち、約13年の追跡期間中、201人に前立腺がんが発生しました。前立腺がんになった方1人に対し、前立腺がんにならなかった方から年齢・居住地域・採血日・採血時間・空腹時間の条件をマッチさせた2人を無作為に選んで対照グループに設定し、合計603人を今回の研究の分析対象としました。
今回の研究では、保存血液を用いて、テストステロン、性ホルモン結合グロブリン(Sex hormone-binding globulin (SHBG))濃度を測定しました。測定したテストステロンは、SHBGと結合しているテストステロンと考えられています。そこで、測定した2種類のホルモン濃度を、ある計算式(Sodergard et al. 1982, Vermeulen et al.1999)にあてはめ、結合していない遊離テストステロン(フリーテストステロン)を算出しました。

性ホルモン濃度と前立腺がんリスクの間には関連を認めない

それぞれのホルモン濃度の値によって最も低いから最も高いまでの4つのグループに分け、前立腺がんリスクを比較しました。その結果、テストステロンとフリーテストステロンでリスクが下がり、SHBGでリスクが上がっているようにみえましたが、統計学的有意な差はなく、いずれの物質についても前立腺がんリスクとの間に関連は見られませんでした。(図)

図. 血中ホルモン濃度と前立腺がんリスク

さらなる研究結果の蓄積が必要

これまでに主に欧米で行われた18の前向き研究を統合解析した結果でも、テストステロン・フリーテストステロン・SHBGをはじめとする、9つの性 ホルモンによる前立腺がんリスクの上昇はみられませんでした。今回の結果はその知見に一致するもので、欧米人と比べてBMIが低く、大豆製品・イソフラボンを多く摂取している日本人でも、テストステロン・フリーテストステロン・SHBGによる前立腺がんリスクの上昇はみられませんでした。
テストステロンの代謝物であるジヒドロテストステロンなどの性ホルモンや、代謝に関わる酵素である5αリダクターゼについては、今回の研究では測定していません。 日本人集団における性ホルモンの前立腺がんリスクに対する影響を見極めるには、今後もさらなる研究を行う必要があります。

研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を独立行政法人国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象 とした医学研究における倫理的側面等について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、 公式ホームページをご参照ください。

多目的コホート研究では、ホームページに 保存血液を用いた研究計画 のご案内を掲載しています。

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