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多目的コホート研究(JPHC Study)

メタボリック症候群関連要因(メタボ関連要因)と肝がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約2万人を平成18年(2006年)まで追跡した調査結果にもとづいて、メタボ関連要因と肝がんとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。
Cancer Causes & Control 2009年6月 20巻741-750ページ

今回の研究対象に該当した男女17,590人のうち、13年の追跡期間中、102人(男性67人、女性35人)に肝がんが発生しました。研究開始時の健診結果をもとに、メタボ関連要因(高血圧、高血糖、低HDLコレステロール、高中性脂肪、過体重)及びその集積のあるグループが、ないグループと比べ、肝がんの発生するリスクが何倍になるかを調べました。

本研究ではメタボ関連要因について下記のように定義しました。また、メタボ関連要因の集積(いわゆるメタボリック症候群)については、国際的にいくつかの基準が存在するため、5つのメタボ関連要因のうち、1)3つ以上の項目のある人、及び2)過体重の他2つ以上の項目のある人、の2通りの定義を用いて検討しました。

表.本研究におけるメタボ関連要因とその集積の定義

 
これによると、対象者のうち、高血圧の割合が59%、高血糖21%、低HDLコレステロール23%、高中性脂肪24%、過体重31%でした。さらに、対象者の22%に3つ以上の要因の集積があり、16%に過体重の他2つ以上の要因の集積があり、メタボリック症候群に当てはまりました。

メタボ関連要因の集積があると肝がんリスクが高い(図)

メタボ関連要因の集積があるグループでは、ないグループと比べて、肝がんの発生リスクが約2倍高くなりました。ただし、要因を個別にみると、肝がんの発生リスクは高血糖または過体重で高くなっていましたが、その他の要因については、関連ははっきりとしませんでした。

関連のあった高血糖と過体重について、もう少し詳しくみたところ、BMIが高くなるほど肝がんの発生するリスクが高くなり、高血糖も過体重もない人に比べ、高血糖と過体重が重なると肝がん発生リスクが3.4倍に高くなっていました。

図.メタボ関連要因及びその集積と肝がん罹患との関連

 
これらの結果は、肝がん最大のリスク要因である肝炎ウイルス感染の有無で分けても、いずれも同様の傾向がみられました。

この研究からは、肝炎ウイルス感染のある人でもない人でも、肥満や高血糖の人の方が肝がんの発生するリスクが高いことがわかりました。肝炎ウイルスに感染していても、肥満や高血糖・糖尿病を予防することにより、肝がんへの進行を予防できる可能性があるといえます。

なぜ、メタボ関連要因は肝がんの発生リスクを増加させるのか?

もともと、非アルコール性脂肪性肝炎から肝硬変や肝がんに至ることがあることから、インスリン抵抗性や糖尿病などメタボ関連要因が肝がんへの進展と関連しているのではないかといわれてきました。しかし、そのメカニズムはよく解明されていません。メタボ関連要因の一つである肥満は、インスリン抵抗性や脂肪肝を引き起こし、腫瘍壊死因子TNF-αの肝臓内への放出やインターロイキンIL-6やIL-8などのサイトカイン分泌を促進させ、非アルコール性脂肪性肝炎を引き起こすと考えられています。このことから、肥満や糖尿病は肝の炎症、酸化ストレスや脂質過酸化反応を引き起こし、肝障害、繊維化、肝硬変、そして肝がんへと進展していくと推察されます。

また、逆に、肝がんに先行して起こる慢性肝炎や肝硬変により糖代謝や脂質の異常が引き起こされ、糖尿病の状態をつくるという報告もあり、今回の結果にもその影響が残っている可能性があります。

肝がんを予防するには

肝がんになった人の8割以上がC型またはB型肝炎ウイルス陽性者だったので、肝がん予防のためには、まず健診などの機会に肝炎ウイルス検査を受け、感染していた場合には肝臓の専門医にかかって適切な治療や経過観察をすることが重要です。

 

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