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多目的コホート研究(JPHC Study)

たばこと死亡率との関係について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、 日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)には、岩手県二戸、秋田県横手、 長野県佐久、沖縄県石川という4地域にお住まいの、40〜59歳の男女約4万人の方々に、アンケートに回答して頂き ました。その後10年間の追跡調査にもとづいて、喫煙と死亡率の関係を調べた結果を、専門誌で論文発表しました ので紹介します(Japanese Journal of Cancer Research 2002年93巻6-14ページ)。

たばこを吸う人の死亡率は、吸わない人と比べて男性は1.6倍、女性は1.9倍

たばこを吸ったことがない人、むかし吸っていたけど止めた人、吸っている人の3グループで、 10年間の死亡率を比べてみました。すると、たばこを吸う人の死亡率は、吸ったことがない人と比べて、男性では 1.6倍、女性では1.9倍と高いことが分りました。死亡原因ごとにみると、たばこを吸う人の死亡率は、がん(男性 1.6倍、女性1.8倍)、心臓病や脳卒中などの循環器疾患(男性1.4倍、女性2.7倍)、その他の死因(男性1.6倍、 女性1.4倍)のいずれでも高くなっていました(下図)。一方、たばこを止めた人の死亡率は、全死因、がん、循 環器疾患のいずれでみても、吸ったことがない人との差は認められませんでした。

喫煙状況と死亡率との関係
喫煙状況と死亡率との関係
*:統計学的に明らかに高い値

亡くなられた男性の5人に1人は、たばこを吸わなければ防げた死亡

もし、今回の調査集団に、はじめから一人も喫煙者がいなかったら、10年間の死亡のうち、どれ くらいを予防できたのかを推計してみました。すると、たばこを吸う男性で起こった死亡646名中の225名(全死亡10 14名中の22%)、たばこを吸う女性で起こった死亡50名中の25名(全死亡500名中の5%)が、予防できたはずという 結果でした。

たくさん吸えば吸うほど死亡率は高くなる

これまでに吸ったたばこの総量を「喫煙指数」といい、1日の喫煙本数÷20×喫煙年数で あらわします。たとえば、一日20本を20年吸った人なら、喫煙指数は20÷20×20=20になります。今回の調査では、 この喫煙指数が高くなるにつれて、死亡率も高くなる傾向が、男性で認められました(図)。

喫煙量と死亡率との関係 男性

特に、がん死亡で、 その傾向がはっきりしていました。なお、女性では、喫煙者が少なかったので、はっきりした結果ではありませんで した。

たばこ自体が健康を害することをあらためて確認

喫煙が、いろいろな病気の危険因子であることは、これまでも国内外で報告されてきました。日 本では、国立がん研究センターが昭和40−57年にかけて行った、40歳以上の約26万人の追跡調査が知られています。この 調査では、たばこを吸っている人の死亡率は、吸わない人より、総死亡では男女とも1.3倍、がん死亡では男性で1.7 倍、女性で1.3倍と高いことがわかりました。今回の私たちの研究も、喫煙が寿命を縮めるという点で、25年前のこ の調査とだいたい似たような結果でした。ところで、たばこを吸う人は、吸わない人と比べて、お酒も飲む人が多く 、食生活も不規則であるなど、たばこ以外の生活習慣も不健康な場合があります。25年前の調査は、このようなたば こ以外の生活習慣の影響が、十分考慮されていませんでした。そのため、たばこを吸う人の死亡率が高いといっても 、それがたばこ自体の影響なのか、それ以外の生活習慣の影響なのか、きちんと区別できないという限界がありまし た。それに対して今回の研究では、喫煙以外の生活習慣についてもくわしく調べ、その影響を統計的手法により調整 しながらデータ解析を行いました。そのため、喫煙以外の生活習慣が悪いのではなく、やはり喫煙そのものが健康に 悪いことを、より明確にしたという点に特色があります。

今からたばこをやめても決して遅くはない

今回の調査では、たばこを止めた人の死亡率は、もともと吸わない人の死亡率と同程度という結 果でした。たばこを止めた人のリスクが、もともと吸わない人と同じところまで下がるのに必要な時間は、病気によ って差があります。肺がんなら20年くらいかかる反面、心筋梗塞なら、止めた直後からはっきりとリスクが下がるこ とが知られています。そのため、喫煙者は、一刻も早くたばこを止めることが、長生きする上で大切です。今からで も決して遅くありませんので、ぜひ、たばこを吸うのを止めましょう。

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