トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >野菜・果物摂取と胃がん発生率との関係について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

野菜・果物摂取と胃がん発生率との関係について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは,いろいろな生活習慣と,がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし,日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)には,岩手県二戸,秋田県横手,長野県佐久,沖縄県石川という4地域にお住まいの,40〜59歳の男女約4万人の方々に,アンケートに回答して頂きました。その後10年間の追跡調査にもとづいて,野菜・果物摂取と胃がん発生率との関係を調べた結果を,専門誌で論文発表しましたので紹介します。 (International Journal of Cancer 2002年102巻39-44ページ)

野菜・果物は少量の摂取で胃がんの発生率を下げる

   ほうれん草のような緑色の野菜,にんじん,かぼちゃのような黄色の野菜,白菜,キャベツ,トマトのような緑黄色以外の野菜,果物について「ほとんど食べない人」,「週に1日から2日食べる人」,「週に3日から4日食べる人」,「ほとんど毎日食べる人」の胃がんの発生率を比べてみました。 発生率の算出にあたっては,年齢,性別,また喫煙,飲酒などの生活習慣による影響を統計的手法によって調整しながら行いました。 その結果,野菜・果物は「ほとんど食べない人」を基準にすると,「週1日以上食べる人」では発生率は低いという結果でした。 しかし,週あたりの野菜・果物を食べる頻度がそれ以上多くなっても胃がんの発生率がさらに低くなる傾向は見られませんでした。

図1.緑色の野菜

図2.黄色の野菜

図3.緑黄色以外の野菜

図4.果物

分化型の胃がん予防に野菜・果物の摂取がさらに効果的

緑黄色野菜とその他の野菜をあわせた総野菜摂取量を均等に5つの群に分けた場合も,最も摂取量の少なかった群を基準とすると下位2/5の群で胃がんの発生率は減少しましたが,それ以上摂取量の多い群でさらに発生率が低くなる傾向は見られませんでした。

一方,胃がんは年齢とともに発生率が高くなる分化型のがんと,若年層にも多い未分化型のがんに分類されます。今までの報告では,胃がんの中でも分化型のがんは未分化型のがんよりも食事等の環境要因の影響を受けやすいと言われています。今回の調査結果においても野菜の摂取量が増えるにつれて,胃がん全体と比べて分化型の胃がんでより発生率は減少しました。

図5.胃がんと野菜摂取量

図6.分化型の胃がんと野菜摂取量

漬物の食べすぎにご用心

今回の調査では,漬物をたくさん食べる人の発生率は,高くも低くもなりませんでしたが, これまでに行われてきた研究では,漬物は塩分を多く含むため胃がんの危険因子だといわれています。 胃がんを予防するためには,漬物以外の新鮮な野菜の摂取を心がけましょう。

野菜・果物に含まれるがんを予防する成分

野菜・果物に含まれるがんを予防する成分には,カロテノイド,葉酸,ビタミンC,フラボノイド,フィトエストロゲン,イソチオシアネート,食物繊維などが上げられます。 これらのうちのある特定の成分ががんの発生率を下げているのか,いくつかの組み合わせによって,発生率を減少させる効果は強まるのかについては,今後調べなくてはならない課題です。

胃がんを予防する食習慣を

胃がんの発生率・死亡率は世界的に減少していますが,それでも日本は他の国に比べ高い状況です。 しかし,日本における食習慣と胃がんとの関連についての報告はあまり多くはありません。 今後は,野菜・果物以外の食物の摂取と胃がんとの関連についても,このコホート研究の中で明らかにしていきたいと考えています。

今回の研究からだけでは,どのぐらいの野菜・果物を食べれば胃がんを予防できるかについてはわかりませんが,これまでの他の研究結果を含めて総合的に考えると,野菜・果物を毎日1回は食べることは胃がん予防につながるといえそうです。

詳細版はこちら >>

上に戻る