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多目的コホート研究(JPHC Study)

緑茶飲用と胃がんとの関連について

多目的コホート研究(JPHC研究)からの結果

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に,岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久(以上コホートI)、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島(以上コホートII)という7地域にお住まいの、40〜69歳の男女約9万人の方々に、食事や喫煙などの生活習慣に関するアンケート調査を実施しました。その後コホートI は12年間、コホートIIは7年間追跡し、緑茶飲用と胃がん発生率(リスク)との関係を調べた結果を、専門誌で論文発表しました(Cancer Causes Control 2004年 15巻 483-491 ページ)。この前向き追跡研究によって、緑茶をよく飲む女性では、胃がんリスクが低くなることが示されました。

緑茶をよく飲むと女性の胃がんリスクが下がる

追跡期間中に892名(男性665名、女性227名)の方が胃がんになりました。緑茶を1日1杯未満飲む人を基準として、緑茶を1日1-2杯、3-4杯、および5杯以上飲むと答えた人の胃がんのリスクを計算しました。なお、緑茶をよく飲む人では年齢が高い、喫煙者が多い、野菜や果物をよく食べるなどの傾向がありましたが、これらの要因自体が胃がんのリスクと関連する可能性がありますので、あらかじめその影響を除いた上で、目的とする緑茶と胃がんとの関連を検討しました。すると下のグラフのように、女性で緑茶を1日当たり5杯以上飲む人で胃がんのリスクは3割ほど抑えられました。男性では緑茶によるリスクの低下ははっきりとしませんでした。

図1.緑茶飲用と胃がんリスク

特に胃の下のほうのがんのリスクは5杯以上で半分に

もう少し詳しく緑茶と胃がんのリスクとの関係をみてみました。下のグラフは胃の上部3分の1と、下部3分の2とで分けて緑茶の影響を女性でみた結果です。すると、胃の上部では緑茶の予防効果はみられませんでしたが、胃の下部では5杯以上飲むことでがんのリスクが1杯未満の人の半分になることが分かりました。

図2.緑茶飲用と部位別の胃がんリスク(女性)

なぜ胃の上部と下部で緑茶の効果が違うのでしょうか。それには緑茶を飲むときの温度が関係していると推測しています。熱い飲料が食道のがんや炎症を引き起こすことは多くの研究で明らかにされています。胃でも、食道に隣接する上部では緑茶を熱いまま飲むとむしろ好ましくない影響があるのかもしれません。緑茶を飲むときは熱いまま飲まずに少し冷ましてから飲むことをお勧めします。

胃がん予防の観点から

これまでこの研究班で、喫煙と高塩分食品の摂取および高塩分摂取に代表される伝統型食生活パターンが胃がんのリスクを上げ、野菜・果物の摂取がリスクを下げることが確かめられてきました。それは他の多くの研究結果と一致するものでした。緑茶については胃がん予防効果がないとする日本からの報告もあり、緑茶の胃がん予防効果は議論のさなかです。今回の結果からは緑茶をよく飲むことにより胃がんのリスクが下がることが女性において示されました。男性でははっきりとした効果はみられませんでしたが、緑茶をよく飲む人にたばこを吸う人や伝統型食生活を送る人が多かったため、その影響を除ききれなかったのかもしれません。現時点ではこれをとれば確実にがんの予防効果があるという単一の食品は存在しません。まずは胃がんのみならず様々な部位のがんのリスクを上げるたばこを控えた上で、高塩分に偏らず、野菜・果物の豊富な食生活を送ることが胃がん予防の近道と思われます。その中で緑茶も多く飲むように心がければ胃がん予防の一助になる可能性があることを、この研究結果は示しています。

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