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現在までの成果

空腹時血糖値と2型糖尿病発症との関連について

-「多目的コホート糖尿病研究(JPHC Diabetes Study)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

 

空腹時血糖値が126mg/dL以上だと糖尿病型と判定されます。空腹時血糖値がこれ以下の場合でも、値が高いほど2型糖尿病を発症しやすいことが知られていて、糖尿病発症のリスクがある程度以上高い人たちを欧米では空腹時高血糖(impaired fasting glucose, IFG)(日本では空腹時血糖値に関する「境界型」)と定義して「正常」とは区別しています。1997年にIFGの概念が導入された時から、IFGと「正常」との境界の血糖値(IFGの下限の血糖値)は110mg/dLでした。2003年に米国糖尿病学会はこの値を100mg/dLに引き下げましたが、WHOや欧州糖尿病学会では110mg/dLのままとしています。日本人ではどちらが妥当なのでしょうか?今回私たちは空腹時血糖値と糖尿病発症との関連を調べた結果を学術雑誌に発表しましたのでご紹介します。(Endocrine Journal 2010年57巻631-639ページ)

 

研究方法の概要 

平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、沖縄県宮古の8保健所(呼称は2010年現在)管内にお住まいで、1998~2000年度および2003~2005年度に実施された糖尿病調査にご協力いただいた方々のうち、空腹時血糖値のデータがあり、1998~2000年度の第1回調査時に糖尿病でなかった2,207名(男性821名、女性1,386名)を対象として5年間の糖尿病発症について調べました。糖尿病は自己申告と空腹時血糖値126mg/dL以上で定義しました。

 

空腹時血糖値と糖尿病発症との関係 

5年間の追跡期間中、125名の方が糖尿病を発症しました。空腹時血糖値が高いほど糖尿病発症率は高くなり、糖尿病発症のリスクは空腹時血糖値が110mg/dLに達する前から上昇していることがわかりました。また空腹時血糖値と糖尿病発症率との関係は性別、年齢によらずほぼ同一のパターンを示していました(図1)。

 

IFGの下限はどの位が妥当なのか 

図1からわかるように、糖尿病発症のリスクは空腹時血糖値が高くなるにつれて連続的に上昇するので、IFGの下限を決めるとした場合にある程度の主観的判断が入ってしまうのは避けられないでしょう。今回の結果からはIFGの下限が110mg/dLでは高すぎるように思えます。図からは糖尿病発症のリスクは空腹時血糖値が100mg/dLあたりから上昇しているようで、また、糖尿病発症の感度と特異度の和を最大にするような別の解析でも最適の値はほぼ100mg/dLという結果でした。

IFGの下限を100mg/dLに引き下げた場合の大きな問題点は、IFGと診断される人の数が数倍に増えてしまうことと、その中に糖尿病を発症しない人も多数含まれてしまうことです。糖尿病発症に関与するのは空腹時血糖値だけではありません。今後の研究により、糖尿病発症リスクをより正確に推定できるようになることが望まれます。

 

図1  空腹時血糖値と2型糖尿病発症との関係

図1  空腹時血糖値と2型糖尿病発症との関係

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