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現在までの成果

喫煙と虚血性心疾患発症との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。まず、平成2年(1990年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部の4保健所(呼称2005年現在)管内にお住まいの40~59歳の男女に、生活習慣についてのアンケートに回答していただきました。そのうち、初回調査時点で循環器病やがんになっていなかった男女約4万人の方々を、約11年追跡しました。
これらの調査結果をもとに、喫煙習慣と虚血性心疾患発症との関連を調べました。虚血性心疾患とは、心筋梗塞に代表される、心臓に血液を送る動脈の血流が悪くなることで生じる疾患で、その原因として動脈硬化や血栓ができることなどがあります。たばこについては、アンケートをもとに喫煙習慣や喫煙本数を把握しました。この研究結果を国際専門誌(European Journal of Cardiovascular Prevention and Rehabilitation 2006年13巻207-213ページ)に発表しましたので紹介します。

たばこを吸わない人に比べて、たばこを吸う人は虚血性心疾患になりやすい

11年の追跡期間中に、男性260人、女性66人、合計326人が虚血性心疾患を発症しました。男女別に喫煙習慣を、「吸わない」、「禁煙した」、「吸っている」に分けて、虚血性心疾患リスクを算出しました。高齢、高血圧、糖尿病、高脂血症、飲酒、食生活などの他の要因によっても虚血性心疾患リスクが高くなったり低くなったりすることがわかっていますので、あらかじめこれらの影響を除いた上で、喫煙習慣との関連を検討しました。

すると、たばこを吸わないグループに比べて、たばこを吸っているグループでは、男女ともに、虚血性心疾患リスクが約3倍高くなることが分かりました。また、疾患を心筋梗塞に限った場合では、男性で約4倍まで高くなることが分かりました(図1)。
たばこを吸うことで、血液をドロドロにする血中成分の増加や善玉(HDL)コレステロールが減少することで動脈硬化が促進されて、虚血性心疾患の発症リスクが増加したと考えられます。

図1.喫煙習慣と虚血性心疾患(男女別)

1日あたりの喫煙本数が多くなればなるほど虚血性心疾患のリスクが増加

男性の1日あたりの喫煙本数を3つのグループ(1~14本、15~34本、35本以上)に分けて、虚血性心疾患リスクについて、たばこを吸わないグループと比較しました。女性では、たばこを吸っている人が少ないため詳しい分析はできませんでした。
その結果、1~14本で2.3倍、15~34本で3.0倍、35本以上で3.1倍と、1日の喫煙本数が多いほど虚血性心疾患のリスクが増加することが分かりました。疾患を心筋梗塞に限った場合では、1~14本で3.2倍、15~34本で3.6倍、35本以上で 4.4倍と、さらに顕著に増加しました(図2)。また、禁煙の効果については、禁煙して2年以内に虚血性心疾患の発症リスクが低下しました(図3)。禁煙の効果が早期に現われるのは、喫煙による血液が固まりやすくなる、血管が収縮しやすくなるといった影響がなくなり、血栓(血液の塊)ができにくくなるためと考えられます。

図2.1日あたりの喫煙本数と虚血性心疾患 図3.禁煙年数と虚血性心疾患

虚血性心疾患にならないためには、「たばこを吸わない」が原則

JPHC研究では、虚血性心疾患のうち、男性で46%、女性で9%は、もしたばこを吸っていなければ、予防できたと推定されます。この割合を、1999年の人口動態統計や患者調査から推定された日本全体の虚血性心疾患に当てはめてみました。すると、1年間で、男性で6,900人、女性で1,400人、合計8,300人の虚血性心疾患死亡と、男性で25万9,000人、女性で4万6,000人、合計30万5,000 人の虚血性心疾患患者が、たばこを吸わないことで予防できる計算になります。「たばこを吸わない」ということは、がんのみではなく虚血性心疾患の予防にも重要です。

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