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多目的コホート研究(JPHC Study)

緑茶・コーヒー摂取と膵がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2006年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約13万人の方々を平成15年(2003年)まで追跡した調査結果にもとづいて、緑茶・コーヒー摂取と膵がんとの関連を調べた結果を論文発表しましたので紹介します。
Eur J Cancer Prev. 2007年16巻542-548ページ 第66回日本癌学会学術総会(2007年10月, 横浜)にて発表)

今回の研究では、研究開始時に行った、既往歴、食生活、喫煙や飲酒などの生活習慣についてのアンケート調査の結果を用いて、緑茶またはコーヒーの飲酒頻度によるグループ分けを行い、その後に発生した膵がんとの関連を調べました。

がんの既往歴がなく該当する項目の回答に不備がないなどの条件により、最終的に、約10万人が今回の研究の解析対象となりました。そのうち、約11年の追跡期間に233人(男性135人、女性98人)が膵がんにかかりました。

緑茶は膵がんと関連なし

緑茶などのお茶には抗酸化作用があり、実験研究から膵がんを含む様々ながんを予防する可能性が確認されています。しかし、ヒトの集団を対象とする疫学研究の結果は一致しておらず、実際にお茶によって予防できるのかどうかの結論は得られていません。

今回の研究では、男性でも女性でも、緑茶の摂取量によって膵がんにかかる危険性(リスク)には差がありませんでした。

図1.緑茶と膵がんリスク

 
コーヒーは男性の膵がんと関連

コーヒーには、がん化を促進する、あるいは抑制する双方向の作用があると考えられ、膵がんに関しては、1980年代にリスクを増加させるという疫学研究の結果が発表されましたが、その後の研究では必ずしも同様の結果が得られていません。また、アジア人の集団を対象にした研究はほとんどありません。

今回の研究の結果、全体としては、コーヒーの摂取量によって膵がんのリスクが高くなったり、あるいは低くなったりという変化は観察されませんでした。ただし、男女別に見ると、男性のみにおいて、ほとんど飲まないグループに比べ、よく飲むグループほどリスクが低くなるという傾向が見られました。

図2.コーヒーと膵がんリスク

 
この研究について

緑茶による膵がんリスクの低下は、今回の研究でも確認されませんでした。その理由には、動物とヒトの膵がんの違いや、緑茶の用量など、実験と生活での条件の違い等が考えられます。また、集団による結果の違いは、お茶の種類や計測方法など研究の条件の他に、いわゆる体質(遺伝子的な違い)を考慮する必要があるのかもしれません。

コーヒーに関しては、男性でのみ膵がんリスクの低下がみられました。研究によって、あるいは集団によって結果が一致しない理由には、緑茶と同様にさまざまな理由が考えられますが、コーヒーとその他の生活習慣や体質との組合せによる影響があるからとも考えられます。

今回の研究では、膵がんリスクに関与すると考えられる他の要因(年齢、肥満指数、運動、喫煙、飲酒、糖尿病歴、居住地域等)の影響を出来る限り小さくするように調整し、また開始後2年以内の膵がんの発生を取り除いても結果が変わらないことを確認しました。それでも、何らかの影響が残ってしまったり、今回考慮できなかった別の要因の影響があったためにお茶やコーヒーの影響がないように見えたりしたという可能性は否定できません。

 

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