トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >野菜・果物摂取と扁平上皮細胞由来食道がんとの関連について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

野菜・果物摂取と扁平上皮細胞由来食道がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病などの病気との関連を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2008年現在)にお住まいの方々に、生活習慣に関するアンケート調査をお願いしました。そのうち、45~74歳の男性約39,000人について、その後平成16年(2004年)まで追跡した調査結果をもとに、野菜・果物摂取と食道がんとの関係について調べました。その結果を専門誌に論文発表しましたので紹介します。
(Int J Cancer. 2008年123巻1935-1940ページ)

食道がんには、扁平上皮がんと腺がんとがあり、それぞれ原因が異なると考えられています。日本人の食道がんの大半を占める扁平上皮がんは飲酒・喫煙との関連が非常に強く、男性に多いのが特徴です。野菜・果物摂取による予防の可能性が指摘されていますが、より信頼性が高いとされる前向き研究はほとんど行われていません。

今回の研究では、食事に関するアンケート調査の結果から野菜・果物の1日当たりの摂取量を推定し、高・中・低摂取の3グループに分け、食道がんの危険度(リスク)を比較しました。約8年の追跡期間中に116人が食道の扁平上皮がん(以後、食道がん)と診断されました。

野菜・果物の摂取量が多いグループで食道がんのリスクが低下

野菜や果物の摂取量が増えると、食道がんのリスクが低下する傾向にありました。ただし、統計学的に有意差が見られたのは、野菜・果物の合計摂取量だけでした。

野菜・果物の高摂取グループでは、低摂取グループに比べ食道がんのリスクがほぼ半減していました。野菜・果物の合計摂取量が1日当たり100グラム増加すると、食道がんのリスクが約10%低下していました。

グラフ①.野菜・くだもの摂取と「食道がん」

 
十字花科の野菜で食道がんのリスクが低下

野菜・果物の種類別には、キャベツ・大根・小松菜などが含まれる十字花科の野菜でのみ統計学的に有意な関連がみられました。十字花科の野菜は、実験研究などで発がんを抑制するとされるイソチオシアネートを多く含んでいるという特徴があります。

野菜・果物摂取は喫煙・飲酒者でもリスクを低下

さらに、喫煙・飲酒習慣別に検討した結果、野菜・果物摂取による食道がんのリスク減少効果は喫煙と大量飲酒のハイリスク・グループで最も大きく、危険度は7.67倍から2.86倍へと大幅に低下していました。喫煙と大量飲酒のハイリスク・グループでは、野菜・果物の合計摂取量が1日当たり100グラム増加すると、食道がんのリスクが約20%低下していました。

グラフ②.喫煙・飲酒習慣別にみた野菜・くだもの摂取と「食道がん」

 
今回の研究について

今回の研究では、野菜・果物の摂取量が増加すると食道がんのリスクが低下する予防的な関連が見られました。この関連は喫煙・飲酒者でも見られました。しかし、野菜・果物摂取による予防的効果は禁煙・減酒による予防的効果に及びません。食道がんの予防には、まず禁煙・禁酒、次に野菜・果物摂取が大切であると言えます。

また今回の研究では、年齢・飲酒・喫煙など食道がんのリスク要因と野菜・果物摂取との関連が結果に影響しないよう配慮して解析しました。食道がんによって食事内容が変わってしまったことによる結果への影響(因果の逆転)の可能性を避けるために、調査後1年以内の食道がんを除いた解析も行いましたが、結果は同様でした。

野菜・果物摂取により食道がんの予防が可能であると結論付けるためには、今後さらに多くの研究で一致した結果が得られる必要があります。

 

上に戻る