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現在までの成果

日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方と自殺との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果報告-

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気や死亡との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成12年(2000年)と平成15-16年(2003-2004年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2014年現在)管内にお住まいだった方々のうち、50~79才の男女7万人の方々を、平成20年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方と自殺との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します。 (Ann Epidemiology 2014年 24巻 199-205ページ

日本は自殺率の高い国として知られています。2011年には10万人あたり約23人が自殺しており、世界で7位です。自殺率の高い国では、主に75歳以上の高齢者の自殺率が高いのですが、わが国の場合、50~60歳代の自殺率の高いのが特徴です。全体でも50歳以上の自殺が半分以上を占めています。

自殺の原因に関する先行研究は大部分横断調査によるものですが、受け身の対処行動や社会秩序を乱すような崩壊的対処行動、逃避や感情的対処行動をとりやすいこと、また積極的な対処行動のとれないことと自殺との関連が見られています。しかしこれまで前向きの追跡調査による研究はなされていません。そのため、今回、一般の日本人を対象とした前向き研究である多目的コホート研究で、この関連について検討してみました。

今回の研究対象に該当した70213人のうち、追跡期間中に、172人が自殺によって死亡しました。自記式アンケートのうち、日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方に関する回答から、対処行動のパターンや対処戦略によって自殺のリスクが何倍になるかを調べました。 具体的には、日常経験する問題や出来事に対してどのように対処しているか、対処型行動として「解決する計画を立て、実行する」「誰かに相談する」「状況のプラス面を見つけ出す努力をする」、逃避型行動として「変えることができたらと空想したり願う」「自分を責め非難する」「そのことを避けて他のことをする」の、合計6つの行動パターンについてそれぞれの頻度を質問しました。それぞれについて多少の2群に分け、頻度の少ない群に比べた多い群の自殺のリスクを調べました。

 

対処行動が自殺のリスクに影響

対処行動を個別にみると、解決する計画を立て実行する「計画型」の人で自殺のリスクが低くなっていました。一方、自分を責め非難する「自責型」では、自殺のリスクが高くなっていました。 全体としては、逃避型の対処戦略をとる人(変えることができたらと空想したり願ったりする、自分を責め非難する、避けて他のことをする、等)で自殺のリスクが高くなりました。

 図. 日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方と自殺との関連

自殺のリスクを減らすには

今回の結果からは、日常経験する問題や出来事に対して自責型の対処行動をせず、積極的に解決する計画を立て実行するような対処の仕方を日常培い、また地域における自殺予防プログラムの中に組み込んでいくことがわが国における自殺の予防に役立つと考えられます。

 

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