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現在までの成果

飲酒と循環器疾患発症との関連への社会的な支えの影響

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の5保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男性約1万9,000人の方々を平成15年(2003年)まで約10年間追跡した調査結果にもとづいて、飲酒量と循環器疾患の発症との関連に対する社会的な支えの影響について調べました。その結果を専門誌に発表しましたので紹介します。
Alcoholism: Clinical and Experimental Research 2009年6月 33巻1025-1032ページ

これまでの研究から、飲酒は脳卒中のリスクを増加させるのに対し、虚血性心疾患のリスクを低下させることが知られています。また飲酒は、社会的な付き合いを円滑にするための手段として広く用いられています。しかしながら、これまで飲酒量と循環器疾患との関連に与える心理社会的な因子の影響についての研究はほとんどなされていません。この研究では、脳卒中の多い日本人集団において、心理社会的な因子の一つである社会的な支え(心身を支え安心させてくれる周囲の家族、友人、同僚などの存在)の影響について検討しました。

飲酒と循環器疾患の発症との関連

約10年の追跡期間に629人の脳卒中、207人の虚血性心疾患、合計836人の循環器疾患の発症を確認しました。エタノール換算で週に300g未満までは、飲酒で全循環器疾患の発症リスクの低下が認められました。全循環器疾患のタイプ別には、これまでの研究結果と同様に、飲酒は虚血性心疾患の発症リスクの低下と関連する一方、週に300g以上の大量飲酒では脳卒中の発症リスクの増加が認められました(図1)。さらに脳卒中のタイプ別に見ると、特に出血性脳卒中のリスクが高くなっていました。

図1.飲酒量と循環器疾患発症との関連

 
飲酒と循環器疾患の発症との関連に対する社会的な支えの影響

本コホート研究では、これまでに社会的な支えが多いほど脳卒中の死亡リスクが低いことを報告していますが、今回その社会的支えのスコアを用いて、飲酒と循環器疾患の発症との関連に社会的な支えが影響しているか否かの検討を行いました。社会的な支えは、研究開始時に行ったアンケートで、①心が落ち着き安心できる人の有無(なし:0点、あり:1点)②週1回以上話す友人の人数(なし:0点、1-3人:1点、4人以上:2点)、③行動や考えに賛成して支持してくれる人の有無(なし:0点、あり:1点)、④秘密を打ち明けることのできる人の有無(なし:0点、あり:1点)でスコア化して、0-3点を低い群、4点以上を高い群として区分して分析しました。

その結果、脳卒中の発症リスクに関して、少量~中等量のグループ(エタノール換算で週に1~299g)において、支えが多い場合はリスクが低いのですが、支えが少ない場合には、約1.2~1.8倍と高いこと、またその一方で、大量飲酒のグループ(週に300g以上)では、社会的な支えが多い場合でもリスクが高い傾向があることがわかりました(図2)。

飲酒と虚血性心疾患との関連については、社会的な支えの影響はみられませんでした。

図2.飲酒量と脳卒中発症との関連に対する社会的な支えの影響

 
この研究について

この研究では、社会的な支えによる好影響は、週にエタノール換算で1-299gの少量~中等量の飲酒の場合でのみ認められました。週に300g以上になると社会的な支えの多少に関わらず脳卒中の発症リスクが増加する傾向となりました。飲酒量による循環器病発症リスクを正確に比べるために、他の要因(年齢・喫煙、BMI、血圧、糖尿病既往、レジャー時の運動、精神的ストレス、飲酒で顔が赤くなるかどうか、就業状況、婚姻状況、健診受診、地域)についての飲酒グループ間の差がないように調整して比較しましたが、調整しきれない部分や、把握できなかった部分が残ってしまい、それが結果に影響した可能性があります。

循環器疾患の予防のためには、大量飲酒は慎むべきです。また、これまでの研究から、大腸がんや糖尿病については、1週間あたりの飲酒がエタノール換算で150g以上から、総死亡や何らかのがんについては300g以上から危険性が高くなることが示されています。飲酒習慣のある人は、1日平均で日本酒なら1合未満、ビールなら大瓶1本未満、焼酎なら0.6合未満、泡盛なら0.5合未満、ワインならグラス2杯未満、ウィスキーならダブル1杯未満に控えることが大切です。また、週に300g以上の飲酒の場合、休肝日がある人(週1~4日飲酒)に比べて、休肝日がない人(週5日以上飲酒)では、死亡率が高いこともわかっていますので、健康維持のためには、「節酒」と「休肝日」を組み合わせた飲酒習慣を実行することが重要です。

 

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