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多目的コホート研究(JPHC Study)

コーヒー・緑茶摂取と肝がんとの関連について

「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約2万人を平成18年(2006年)まで追跡した調査結果にもとづいて、コーヒー・緑茶摂取と肝がん罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。 (Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009年18巻 1746-1753ページ)

コーヒーと緑茶は、ポリフェノールなどの抗酸化物質を含むことから、がんを予防するのではないかと考えられています。しかしながら、肝がんとの関連については疫学的エビデンスが必ずしも十分ではありません。コーヒーについては、コホート研究や症例対照研究、メタアナリシスなどから、以前より、肝がんを予防する可能性ありと言われてきましたが、これまでのほとんどの研究は、肝炎ウイルス感染状況を考慮したものではありませんでした。また、緑茶との関連については、研究がほとんどなく、肝がんへの影響についてはわかっていません。そこで、本研究ではC型、B型などの肝炎ウイルス感染状況を考慮して、研究を行いました。

今回の研究対象に該当した男女18,815人(男性6,414人、女性12,401人)のうち、13年の追跡期間中、110人(男性73人、女性37人)に肝がんが発生しました。研究開始時の質問票をもとに、コーヒー及び緑茶の摂取量によってグループ分けし、最も少ないグループと比較して、その他のグループで肝がんが発生するリスクが何倍になるかを調べました。

本研究の対象者の33%はコーヒーをほとんど飲まない一方、9%はコーヒーを毎日3杯以上飲むと回答していました。また、対象者の63%は毎日3杯以上緑茶を飲むと回答していました。肝炎ウイルスに感染している人に限定した場合も、類似していました。

コーヒー摂取量が多いと肝がん発生リスクは低くなるが、緑茶摂取とは関連なし(図)

コーヒーは、摂取量の多いグループの肝がんリスクが減少する傾向にありました。一方、緑茶では、高摂取グループで肝がんリスクが低下するというような傾向は見られませんでした。

これらの結果は、肝がん最大のリスク要因である肝炎ウイルス感染の有無で分けても、いずれも同様の傾向がみられました。

コーヒー及び緑茶摂取と肝がん罹患との関連

 
考えられるメカニズム

コーヒーは、肝機能酵素活性を改善したり、肝がんの前病変である肝疾患や肝硬変のリスクを低下させたりすることが知られており、肝細胞炎症を軽減することによって肝病変の悪化を抑制し、肝がんの予防につながると考えられます。

コーヒーに含まれる成分である3つの因子、すなわちクロロゲン酸、カフェイン、kahweolやcafestolなどのジテルペンが、肝がん予防に関わっていると考えられています。そのうち、ジテルペンについてはインスタントやフィルターやろ過したコーヒーではほとんど含まれていないため、クロロゲン酸とカフェインが主な候補因子と考えられます。

一方、緑茶の肝がんにおける役割はよくわかっていません。本研究からは、緑茶は少なくともリスク低下の方向には働いていないようでした。緑茶はビタミンCを含んでいるが、ビタミンCは、抗酸化物質としての役割を持つのみでなく、鉄吸収を高めることが知られています。鉄過剰は、肝線維化を促進することが知られていますので、緑茶と肝がんに関連が見られなかったのは、ビタミンCの発がん予防作用と鉄を介した作用が共存していたためかもしれません。

肝がんを予防するには

肝がんに罹患した人の8割以上がC型またはB型肝炎ウイルス陽性者だったので、肝がん予防のためには、まず健診などの機会に肝炎ウイルス検査を受け、感染していた場合には肝臓の専門医にかかって適切な治療や経過観察をすることが重要です。

 

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