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現在までの成果

10年間で胃がんに罹患する確率について―生活習慣リスク因子とABC分類を用いた個人の胃がん罹患の予測モデル―

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所(呼称は2015年現在)管内にお住まいだった40~69才の方々にアンケート調査への回答を依頼しました。このうち、血液を提供いただいた約1万9千人の方々を、平成21年(2009年)まで追跡した調査結果にもとづいて、10年間で胃がんに罹患(注1)する確率を予測するモデルを作成して、専門誌に発表しましたのでご紹介します。 (International Journal of Cancer 2015年7月 web先行公開

(注1:がん罹患=がんと診断されること)

胃がんのリスク因子としてヘリコバクター・ピロリ(H.p)感染が挙げられます。近年、H.p.感染の有無(H.p.IgG 抗体価から診断)と萎縮性胃炎(Atrophic gastritis; AG,ペプシノーゲン法で診断)の有無についてそれぞれ血液の測定値から判定し組み合わせた「ABC分類」が胃がんのリスク分類として注目されています。一方、H.p.感染以外にも喫煙や高塩分食品など、胃がんに関わる要因が知られていますが、これらの要因を組み合わせて個人の胃がん罹患リスクを示すような試みはなされてきませんでした。

そこで、多目的コホート研究において喫煙、胃がんの家族歴、高塩分食品の摂取、ABC分類に基づき胃がん罹患を予測するモデルを構築しました。個人の胃がんリスクが確率として示されますので、自分のリスクを正しく知り、生活習慣を見直したり、必要な検診を受けるなどの望ましい予防行動、保健行動に結びついたりすることを目指します。

なお、ABC分類では以下のように胃がんのリスク状態を分類します。

 223リスト

 

ABC分類、性別、年齢と他のリスク因子(喫煙、胃がんの家族歴、高塩分食品摂取)から胃がんの罹患確率を予測

図にABC分類、性別、年齢および他のリスク因子(喫煙、胃がんの家族歴、高塩分食品摂取)から算出される10年間で胃がんに罹患する確率を男女別、年齢別に示しました。性・年齢の他はABC分類のみを用いて算出した場合の確率を中央の黒い棒で示し、両側は他のリスク因子を考慮した場合を示しています。ABC分類の同じ群の同じ年齢でも、他のリスク因子次第では胃がんの罹患確率には開きがみられます。一方、A群では一貫してリスクが低いといえます。なお、男女で縦軸のスケールは変えています。

 223図1縮小

 

223図2縮小

 

 

男性の10年間で胃がんに罹患する確率は0.04%(40歳、A群、他のリスク因子全て無)から14.87% (70歳、D群、他のリスク因子全て有)と計算されました。他のリスク因子を考慮しない場合では確率は0.06%から8.71%の範囲でした。一方、女性での同様の確率は0.03%(40歳、A群、他のリスク因子全て無)から4.91% (70歳、D群、他のリスク因子全て有)、他のリスク因子を考慮しない場合は0.04%から2.43%の範囲でした。

簡易スコアから自分の確率を知ることもできます。たとえばスコアを合計して、0~10点の場合、10年間で胃がんに罹患する確率は0.4%以下という値で、スコアの合計が14点以上で確率は1%を超えます。

 

223表1 

 

223表2

 

この研究について

2万人近い血液および生活習慣リスク因子データから、10年間で胃がんに罹患する確率を予測するモデルが構築されました。これまでに発表された予測モデルの中で最も規模の大きい研究に基づいています。C群とD群の差はほとんどないともいえるもので、最近のメタ解析の結果とも一致します。男性の確率は女性に比べて高く、また、年齢の影響も男性でより強い傾向がありました。

今回は大規模データを用いた精度の良いモデルの構築に主眼を置きました。モデルの精度はこの研究の中では確認済みですが、独立した別の研究における検討は行っていません。妥当性の確認と実用化が今後望まれます。たとえば、A群での一貫した胃がんリスクの低さはこのグループでの検診のあり方を今後検討する必要性があることを示しました。

今回の結果から、BCD群ではA群に比べて胃がんのリスクが高いことが示されました。特にBCD群の場合は生活習慣の見直しや必要な検診を受けるなどの望ましい予防行動、保健行動をこころがけましょう。A群の場合も胃がんと関連する生活習慣に注意するとともに、胃の症状があれば医師を受診して必要に応じた検査を受ける姿勢は必要です。

研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象とした医学研究における倫理的側面等について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。

多目的コホート研究では、ホームページに保存血液を用いた研究計画のご案内を掲載しています。

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