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現在までの成果

ビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がんの罹患リスクとの関連:コホート内症例対照研究

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2014年現在)管内にお住まいだった方々のうち、平成15年(2003年)まで追跡した調査結果をもとにビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連について調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(PLoS One. 2016 Oct 13;11(10):e0164648.)

近年、ビタミンDによる抗腫瘍効果が実験研究により報告されています。その抗腫瘍効果は、ビタミンDがビタミンD受容体に結合することで作用すると考えられています。ビタミンD受容体は大腸の細胞にも存在するため、ビタミンDの抗腫瘍効果により、大腸がんを予防する可能性があります。本研究では、ビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連を検討しました。遺伝子多型とは、遺伝子に見られる比較的頻度の多い変化の事です。ビタミンD受容体の遺伝子多型により、ビタミンD受容体の質や量が変化し、抗腫瘍効果に影響を与えることが考えられます(遺伝情報に関する詳細はこちらをご覧ください)。

 

保存血液を用いた、コホート内症例対照研究

多目的コホート研究開始時の質問票に回答し、研究のために血液を提供した方々の中から、2003年末までの追跡期間中に大腸がんと診断された人を症例とし、症例1名に対し性、年齢等がマッチする対照2名を選択しました。今回は症例375名と対照750名を本研究の分析対象としました。ビタミンD受容体の遺伝子には数多くの遺伝子多型が存在しています。今回の研究では、ビタミンD受容体の遺伝子から29の遺伝子多型を選択しました。

 

ビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連が限定的に示された

本研究で検討した29の遺伝子多型のうち、8つの遺伝子多型(rs2254210,
rs1540339, rs2107301, rs11168267, rs11574113, rs731236, rs3847987, rs11574143)で大腸がん罹患リスクが変化する傾向が見られました(図1)。しかし、本研究で数多くの遺伝子多型を検討した点を考慮(多重補正)すると、ビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの間に見られた関連は、統計学的に確からしいとまでは結論付けられませんでした(図1:統計学的有意な多重補正P値は<0.05)。

図1.ビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がんとの関連

この研究について

今回の研究から、ビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連がある傾向が示されました。今後、ビタミンD受容体の遺伝子多型が、ビタミンD受容体にどのような影響を与えるのかを明らかにするような研究が望まれます。

研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。多目的コホート研究では、ホームページに多層的オミックス技術を用いる研究計画のご案内や遺伝情報に関する詳細も掲載しています。

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