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現在までの成果

血中Cペプチド濃度と前立腺がん罹患との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2016年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男性約4万3千人の方々を平成17年(2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて、血漿中のCペプチド(Cペプタイド)濃度(注1)と前立腺がん罹患率との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(European Journal of Cancer Prevention 2017年ウェブ先行公開)。

注1 体内でインスリンを生成する過程で生じる副産物で、血中や尿中のCペプチド測定は、インスリン測定の代用となる。

糖尿病は様々ながんのリスクになることが報告されており、今まで、私たちの研究グループからもいろいろながんのリスクとなる可能性を報告しています(糖尿病とその後のがん罹患との関連について)。一方、その理由は明確にはなっていませんが、糖尿病と前立腺がんとの関連については、多くの研究で糖尿病があると前立腺がんのリスクが低くなることが報告されています。ところが、アジア人に限定すると糖尿病がリスクになると報告されるなど見解は一致していません。また、最近の報告では、糖尿病患者は進行性前立腺がんのリスクが高いことが報告されています。そこで、私たちは、日本人における、血中Cペプチド濃度と前立腺がんとの関連を病期別に調べました。

 

保存血液を用いた、コホート内症例対照研究

多目的コホート研究を開始した時期(1990年から1995年まで)に、一部の方から、健康診査等の機会を利用して研究目的で血液を提供していただきました。今回の研究対象に該当し保存血液のある男性約1万4000人のうち、約13年の追跡期間中、201人が前立腺がんに罹患しました。前立腺がんになった方1人に対し、前立腺がんにならなかった方から年齢・居住地域・採血日・採血時間・空腹時間の条件をマッチさせた2人を無作為に選んで対照グループに設定し、合計603人を今回の研究の分析対象としました。 今回の研究では、保存血液を用いて、Cペプチド濃度を測定しました。

 

血中Cペプチド濃度の影響は前立腺がんの病期で異なる

血中Cペプチド濃度の値によって低い、中間、高い、の3つのグループに分け、前立腺がんのリスクを比較しました。その結果、統計学的有意ではありませんが、限局がんではCペプチド高濃度グループでリスクが減少した一方で、進行がんではリスクが増加するという、異なる傾向がみられました。空腹時かそうでないかで、Cペプチド濃度に差がみられましたので、空腹時採血者に限定して解析も行ったところ、統計学的有意ではありませんでしたが、その影響がやや大きくなりました(最も低濃度のグループに対する最も高濃度の限局がんリスク:0.49(95%信頼区間0.23-1.04、傾向性のp値=0.06)、進行がんリスク:2.82(95%信頼区間0.30-26.36、傾向性のp値=0.37)(図)。

 

 

さらなる研究結果の蓄積が必要

今回、Cペプチド濃度が、限局前立腺がんにはリスク低下と関連し、進行前立腺がんにはリスクを上昇させる関連がみられたことから、Cペプチドは発がんには予防的に作用し、逆に、がんの進展や転移などに関しては進行を促す可能性があることが示唆されました。今回の結果は、高血糖や高インスリン血症が、糖尿病患者の前立腺がん転移をうながし、予後が悪くなる、という報告とも一致しています。しかし、Cペプチドが高濃度だと、前立腺がんのマーカーとして使用されるPSAの値が低くなり、発見されたときには進行前立腺がんとなっているという、発見による偏り(バイアス)がある可能性にも注意が必要です。今後もアジアからの、また、病期別に検討した、さらなる研究結果の蓄積が必要です。
研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象とした医学研究における倫理的側面等について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。多目的コホート研究では、ホームページに保存血液を用いた研究計画のご案内を掲載しています。

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