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現在までの成果

抗酸化ビタミン摂取と脳卒中発症リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)および平成5年(1993年)に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2017年現在)管内にお住まいで、5年後調査時に45~74歳の男女約8万2千人の方々を約12年間追跡した調査結果にもとづいて、抗酸化ビタミンの摂取量と脳卒中発症との関連を調べた結果を発表しましたので紹介します(Eur J Clin Nutr 2017年10月)。

 

抗酸化ビタミンと脳卒中発症リスク

抗酸化ビタミンとは、活性酸素の有害作用を抑える抗酸化作用をもつことが報告されているビタミンで、カロテノイド、ビタミンE、およびビタミンCなどが含まれます。抗酸化ビタミンは、血管内皮膜の安定性を維持するなどの作用から、脳卒中との関連が報告されていますが、日本人における抗酸化ビタミンの摂取と脳卒中発症リスクとの関連についての検討は少なく、結果も一致していませんでした。
そこで、本研究では、日本人における抗酸化ビタミン摂取(αカロテン、βカロテン、トコフェロール、ビタミンC)が脳卒中の発症に及ぼす影響を検討しました。今回の研究では、研究開始から5年後に行ったアンケート調査の結果を用いて、食事からの抗酸化ビタミンの摂取量を算出し、その後の脳卒中の発症リスクを調べました。

 

全対象者では、抗酸化ビタミン(αカロテン、βカロテン、トコフェロール、ビタミンC)の摂取量による全脳卒中および脳梗塞リスクに違いはない

追跡期間中に、3,541人が脳卒中(うち脳梗塞が2,138人)を発症しました。脳卒中に関連のある項目(性別、年齢、BMI、喫煙の有無、ビタミンサプリメント摂取、運動習慣、飲酒習慣、エネルギー・食塩・飽和脂肪酸・n-3系脂肪酸・n-6系脂肪酸・カルシウムの各摂取量、糖尿病・高血圧・脂質異常症の既往歴)からの影響を、統計学的に排除した分析の結果、αカロテン、βカロテン、トコフェロール、ビタミンCの摂取量は、いずれも全脳卒中および脳梗塞の発症と統計的に有意な関連がありませんでした(図1)。

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喫煙習慣のない人では、ビタミンCを多く摂取している人で全脳卒中と脳梗塞発症リスクが低い

喫煙習慣の有無によって対象者を分けて分析を行った結果、追跡開始時に喫煙習慣のない人(吸わない人とやめた人)では、ビタミンCの摂取量が多いグループ(Q5)が、ビタミンCの摂取量が少ないグループ(Q1)に比べて全脳卒中発症リスクは約19%,脳梗塞発症リスクは約24%低減していました(図2)。なお、喫煙習慣のある人では、抗酸化ビタミン摂取と全脳卒中や脳梗塞の発症リスクとの関連はありませんでした。

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この研究について

本研究の結果から、日本人においては、喫煙習慣がなく、食事でビタミンCを多く摂取している人は、脳卒中の発症を抑えられる可能性が確認されました。しかし、ビタミンCを多く摂取している人は、野菜や果物を多く食べている傾向があり、野菜や果物に含まれるカリウムや食物繊維など、脳卒中発症に予防的な栄養素も同時に摂取しています。今回の研究においても、統計学的にこれらの影響は考慮したものの、完全に取り除くことはできなかった可能性があります。脳卒中の発症予防効果がビタミンC単独の作用であるかどうかについては、今後、さらなる研究が必要です。

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