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現在までの成果

コーヒー摂取と肺がんリスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、新潟県長岡、茨城県水戸、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内にお住まいだった、40〜69歳の約8万7千人の方々を平成23年(2011年)まで追跡した調査結果に基づいて、習慣的なコーヒー摂取と肺がんリスクとの関連を調べました。その研究結果を専門誌に論文発表しましたので紹介します(Journal of Epidemiology 2017年ウェブ先行公開)。

コーヒーには、抗酸化作用・抗炎症作用・インスリン抵抗性を改善させる作用等を持つ化合物が多く含まれており、コーヒー摂取により全死亡リスクや特定部位のがん罹患リスクが低下する可能性があることが近年注目されています。コーヒー摂取と肺がんとの関連を調べた先行研究では、男女ともにコーヒー摂取による肺がんリスクの上昇が報告されていますが、喫煙状況別にみてみると非喫煙者における有意なリスク上昇はみられませんでした。肺がんの最も大きなリスク要因は喫煙ですが、習慣的にコーヒーを摂取する方には喫煙者が多い傾向にあり、喫煙の影響を取り除くことが肺がん研究の課題としてあげられてきました。そこで本研究ではコーヒー摂取と肺がんリスクとの関連について、喫煙の有無だけでなく喫煙本数などで細かく分類して統計学的に調整することに加え、喫煙状況別・がんの組織別に分類して検討しました。

 

コーヒーを多く摂取するグループにおいて、小細胞肺がんのリスクが上昇

 

今回の研究では、研究開始時のアンケート回答からコーヒーの摂取頻度を、ほとんど飲まない、1日1杯以下、1日1〜2杯、1日3〜4杯、1日5杯以上飲むという5つのグループに分け、グループ間での肺がんリスクを比較しました。本研究の追跡期間中に、1,668人(男性1,227人、女性441人)が肺がんに罹患しました。

コーヒーをほとんど飲まないグループを基準として比較した場合、喫煙状況を統計学的に調整しなければ、コーヒーを摂取することで全肺がんリスクの上昇と関連することが確認されました。しかしながら、喫煙状況を考慮した検討では、小細胞肺がんのリスク上昇以外に統計学的に有意な関連はみられませんでした(図1)。この傾向は、研究開始から5年以内の肺がん罹患例を除いた場合や、男女別の場合も検討でも同様の結果でした。

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喫煙状況別にみてみると、非喫煙者と過去喫煙者ではコーヒー摂取と肺がんリスクとの間に関連はみられませんでしたが、男性の喫煙者(特にヘビースモーカー;喫煙指数20.0以上)に限っては、統計学的に有意な肺がんリスクの上昇がみられました(図2)。

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この研究について

喫煙状況を細かく分類した今回の結果から、日本人におけるコーヒー摂取と全肺がんリスクとの間に有意な関連はないことが示唆されました。しかしながら、コーヒー摂取による小細胞がんのリスクの上昇がみられました。これは、肺がんのなかでも、小細胞がんと扁平上皮がんは喫煙との関連が大きいことがわかっているので、統計学的に喫煙の調整を行いましたが、その影響を排除しきれなかった可能性が考えられます。また、喫煙者に限定した解析でみられた、コーヒー摂取による肺がんリスクの上昇も、喫煙の影響を取り除けなかったことが、その原因の一つではないかと考えられます。今後の研究では、喫煙に関するより詳細な情報を用いてコーヒー摂取と肺がんとの関連を検討し、エビデンスを蓄積していくことが求められます。
この研究で用いた質問票には、コーヒーのタイプ(ドリップコーヒー、インスタントコーヒー、缶コーヒー、ディカフェコーヒー等)を分けてはいませんので、この点をご留意ください。

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