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現在までの成果

コーヒー・緑茶摂取と急性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群のリスク

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2017年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約9万5千人の方々を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、コーヒー・緑茶摂取と急性骨髄性白血病(AML)・骨髄異形成症候群(MDS)のリスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer, 2017年ウェブ先行公開)。

 

急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)とは

AMLとは、骨髄中の造血幹細胞ががん化し、がん化した細胞(白血病細胞)が増殖する血液のがんです。同様に、MDSも骨髄中の造血幹細胞の異常により、正常な血液細胞が作られなくなる病気です。MDSの一部の症例では、進行してAMLに移行することがあります。AML、MDSともに治療が難しく、これらの病気の危険因子を知ることは、予防のために重要です。

 

コーヒー・緑茶とAML・MDS罹患の関連について

コーヒーや緑茶には、抗酸化作用のあるカフェインやポリフェノールが含まれており、一部のがんについてはがん予防効果が報告されていますが、コーヒー・緑茶摂取とAML・MDSのリスクとの関連についてはよくわかっていません。そこで、私たちは、日本人における、コーヒー・緑茶摂取とAML・MDSのリスクとの関連を調べました。

 

研究方法の概要

調査開始時のアンケート調査における、コーヒー・緑茶の摂取習慣についての回答をもとにして、コーヒーを飲む頻度で「飲まない(週に1回未満)」、「週に1~4回飲む」、「1日1杯以上飲む」の3つのグループに分けました。緑茶摂取については、緑茶を飲む頻度で「1日1杯未満」、「1日1~2杯飲む」、「1日3~4杯飲む」、「1日5杯以上飲む」の4つのグループに分けました。平均で約18年の追跡期間中に、AML 85人、MDS 70人の罹患が確認されました。年齢、性別、居住地域、喫煙、飲酒、職業、および肥満指数が結果に影響しないように統計学的に考慮して、コーヒー・緑茶摂取とAML・MDSの罹患率との関連を検討しました。

 

男性において、コーヒーの摂取はMDSのリスク低下と関連していたが、コーヒー摂取とAMLのリスクに明確な関連はなかった。

本研究の結果から、男性のMDSのリスクについては、コーヒーを「1日1杯以上飲む」グループは、コーヒーを「飲まない」グループに比べて、MDSのリスクが0.47倍であり、統計学的有意にMDSのリスクが低下していました(図1)。一方、男性において、コーヒー摂取とAMLの罹患との間に明らかな関連は認められませんでした(図1)。また、たばこを吸わない男性に限った分析では、統計学的有意ではありませんでしたが、AML・MDSともにコーヒー摂取によるリスク低下の傾向が認められました。女性では、AML・MDSに罹患した人の数が少ないため、コーヒー摂取とAML・MDS罹患率との関連ははっきりしませんでした。

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緑茶摂取とAML・MDSのリスクに明確な関連はなし

緑茶摂取については、男女とも、AML・MDSのリスクとの間に明らかな関連は認められませんでした(図2)。

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さらなる研究結果の蓄積が必要

今回の結果から、男性において、コーヒー摂取はMDSのリスク低下と関連していましたが、AMLのリスク低下とは関連していませんでした。しかし、たばこを吸わない男性に限った分析では、コーヒー摂取はAML・MDSともにリスクを下げる傾向にありました。これらのことから、コーヒーをたくさん飲む人の中には、AML・MDSの確立した危険因子であるタバコを吸う人が多く含まれており、特に、AMLでは、統計学的に補正しても、喫煙の影響を完全には排除できなかった可能性があります。緑茶摂取に関しては、今回の研究では関連が認められませんでしたが、これまで、AML・MDSのリスクとの関連を調べた研究は少なく、今後の検討が必要です。
AML・MDSは他のがんと比べると罹患率が低いため、今回の結果が偶然に得られた可能性も否定できません。コーヒー、緑茶摂取とAML・MDSのリスクの関連については、今後さらなる研究結果の蓄積が必要です。

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