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多目的コホート研究(JPHC Study)

自覚的ストレスとがん罹患との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2017年現在)にお住まいだった方々のうち、がんになっていなかった40~69歳の男女約10万人を、平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、自覚的ストレスとがん罹患との関連を調べました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します(Scientific Reports. 2017 Oct 11;7(1):12964)。

現在までの研究から、ストレスは様々な病気のリスク要因であることが示唆されていますが、そのメカニズムは解明されていません。また、がんとの関連についても研究が進んでいません。その理由として、主観的な情報であるストレスの程度を測定することが難しいことが挙げられます。また、慢性的なストレスは、一時的なストレスよりも、生理的影響や行動パターンへの影響も大きく、病気のリスク要因となることが示唆されていますが、慢性的なストレスの影響を考慮した研究が少ないことも理由のひとつとして挙げられます。そこで、自覚的ストレス及び自覚的ストレスの変化と、全がん罹患リスクとの関連を検討することを今回の研究の目的としました。

 

長期間にわたる自覚的ストレスは全がん罹患のリスク上昇と関連

本研究の追跡調査中(平均17.8年)に、男女計17,161人のがん罹患が確認されました。
調査開始時のアンケートの回答から、日常的に自覚するストレスの程度について3つのグループ(低、中、高)に分けて、その後の全がん罹患を比較しました。自覚的ストレスレベルが「低」のグループを基準とし、それ以外のグループのがんリスクを比較したところ、調査開始時の自覚的ストレスレベルと全がん罹患との間に統計学的有意な関連は見られませんでした。しかし、調査開始時と5年後調査時のアンケートにおける、自覚的ストレスに関する回答の組み合わせから、その変化を6つのグループ(常に低、常に低・中、常に中、高が低・中に変化、低・中が高に変化、常に高)に分け、がん罹患リスクとの関連を検討した結果、常に自覚的ストレスレベルが高いグループは、常に自覚的ストレスレベルが低いグループに比べ、全がん罹患リスクが11%上昇していました。

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図1.自覚的ストレスレベルと全がん罹患リスク(男女計)
 *調査開始時の年齢、地域、性別、心理的要因、BMI、喫煙状況、飲酒状況、職業、運動、同居の有無、野菜・果物摂取量、がん家族歴で統計学的に調整。

 

ストレスとがん罹患はどう関係しているのか

本研究の結果から、長期的にみると、自覚的ストレスレベルが高ければ、全がん罹患リスクが高くなるという関連が認められました。本研究では、男性で、この関連が強くみられ、全体の結果に影響を与えたと考えられます。この理由として、本研究の対象者のうち、常に高いストレスを受けていたのは主に男性であったこと、また、女性よりも男性の方がストレスに対する生理的影響が大きい可能性が考えられます。また、ストレスレベルが高い男性は、喫煙や飲酒など、がんのリスク要因となる生活習慣をもつ傾向が強く、統計学的にこれらの影響は考慮したものの、完全に取り除くことはできなかった可能性があります。臓器別でみると、特に、肝がん・前立腺がんで自覚的ストレスが高いとリスクの上昇がみられました。ストレスががんを引き起こすメカニズムは良く分かっていませんが、動物実験では、免疫機能の低下を通じて他の肝疾患を発症し、発がんに至ることが報告されていることから、肝がんは特にストレスの影響を受けやすい可能性が考えられます。他部位のがんについては現在まで得られた知見が少なく、今後ストレスとがん罹患のメカニズムについて更なる検討を行うことが重要といえます。

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