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多目的コホート研究(JPHC Study)

10年間で肺がんに罹患する確率について―詳細な喫煙状況などを用いた個人の肺がん罹患の予測モデル―

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部(コホートI)、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田(コホートII)の10保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の約10万人の方々を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、10年間で肺がんに罹患(がんと診断されること)する確率を予測するモデルを作成して、専門誌に発表しましたのでご紹介します。(Cancer Science 2018年1月Web先行公開)。

肺がんは、世界で最もがん死亡率の高いがんであるため、個人の肺がんリスクを確率として提示することで、自分のリスクを正しく知り、生活習慣を見直したり、必要な検診を受けたりするなどの望ましい予防行動、保健行動への動機付けにつなげることが重要です。そこで、多目的コホート研究において年齢、性別、喫煙開始年齢、生涯喫煙量(一日の喫煙本数×喫煙年数)、ならびに禁煙年数に基づき生存解析モデルを構築し、個人が10年間で肺がんに罹患する確率を予測しました。

  

性別、年齢と喫煙状況の詳細な情報(喫煙開始年齢、生涯喫煙量、ならびに禁煙からの経過年数)から肺がんの罹患確率を予測

図1と図2に、年齢、性別、生涯喫煙量から算出される10年間の肺がん罹患確率を、現在喫煙、禁煙後10年以上経過したグループの別に示しました。10年間の肺がん罹患確率は、年齢が高いほど、また、生涯喫煙量が多いほど上昇していました。男性では、10年以上禁煙した場合、同じ年齢や、同じ生涯喫煙量の現在喫煙者と比較して、肺がん罹患確率は低くなっていました。女性でも、全体的に肺がんの罹患確率は低いものの、男性と同様の傾向が見られました。図には示していませんが、非喫煙者の肺がん罹患確率は、男性で0.06%(40歳) から1.35%(70歳)、 女性で0.10%(40歳)から0.75%(70歳)でした。

 

図1

289_1

※生涯喫煙量=一日の喫煙本数×喫煙年数

 

図2

289_2

※生涯喫煙量=一日の喫煙本数×喫煙年数

 

簡易スコアから自分の確率を知ることもできます(図3)。たとえば、ご自身に当てはまる①喫煙状況、②喫煙開始年齢、③年齢、のスコアを合計して、0~7点の場合、10年間で肺がんに罹患する確率は0.5%以下になります。スコアの合計が11点以上で確率が1%を超えます。

 

図3

 289_3

 

この研究について

今回の結果から、10年間で肺がんに罹患する確率を予測するモデルが構築されました。今回の肺がん罹患確率の予測モデルは、多目的コホート研究のコホートIIのデータを使って構築されました。そのモデルにより予測された肺がん罹患確率は、コホートIのデータから実際に観察された確率とのずれが少ないことを確認しました。
受動喫煙が肺がん罹患確率に与える影響も検討しましたが、今回のデータでは予測に大きな影響がなかったためモデルには使用しませんでした。今回使用した受動喫煙に関するデータは、職場など家庭以外の場所での受動喫煙についての情報のみであったので、受動喫煙の状況をうまく把握できなかった可能性があります。

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