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現在までの成果

体格と甲状腺がんとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の約10万人の方々を平成22年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、体格(身長、体重、肥満指数)と甲状腺がんとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。(Cancer Medicine, 2018年5月, ウェブ先行公開)

身長や体重などの体格指標は、甲状腺がんのリスクと関連がある可能性が報告されています。実際に、欧米などの研究では、高身長ほど甲状腺がん罹患リスクが高くなることが報告されています。しかしながら、アジア人における体格指標と甲状腺がんとの関連性については、大規模な疫学研究から明らかになっていません。そこで、私たちは、日本人における、体格と甲状腺がんとの関連を調べました。

 

男性において、身長が高いグループで甲状腺がんのリスクが高い

本研究の追跡期間中(平均16.5年)に、191名(男性37名、女性154名)の甲状腺がん罹患が確認されました。調査開始時のアンケート調査から、男女別に身長の低い方から4つのグループ;男性(≦160cm、161-164cm、165-168cm、≧169cm)、女性(≦148cm、149-152cm、 153-156cm、≧157cm)に分けて、その後の甲状腺がんのリスクを比較しました。その結果、男性において、身長が最も低いグループ(≦160cm)に比べて、3番目に高いグループ(165-168cm)と最も高いグループ(≧169cm)において、甲状腺がん罹患リスクが統計学的有意に高いことが確認されました(図1)。一方で、女性においては身長と甲状腺がん罹患との関連は認められませんでした。また、身長と同じように、体重や肥満指数を4つのグループに分け、甲状腺がんとの関連を調べましたが、男女ともに甲状腺がんとの関連は認められませんでした。

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※調査開始時の年齢、地域、喫煙、飲酒、余暇活動、糖尿病歴、緑茶摂取、海藻摂取、過去の健診有無、体重で統計学的に調整。

 

この研究について

今回の研究から、欧米などの研究結果と同様に、身長が高いと甲状腺がんリスクが高くなることが日本人の男性において示されました。身長が高い人で甲状腺がんリスクが高くなる詳細なメカニズムは明らかにされていませんが、インスリン様成長ホルモンが関与していることなどが考えられています。一方で、本研究において女性では身長との関連がみられませんでした。その明確な理由は不明ですが、女性解析対象者の身長が全般的に低く、身長のばらつきの範囲も狭かったことが原因の1つかもしれません。しかしながら、本研究の結果の解釈には以下の点を考慮する必要があります。甲状腺がんが確認された男性の人数が少なかったため、今回の結果が偶然に得られた可能性は否定できません。また、体格と甲状腺がんとの関連に影響するかもしれない他の要因を調整できていない可能性があります。体格と甲状腺がんとの関連については、今後もさらなる研究結果の蓄積が必要です。 

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