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現在までの成果

女性関連要因と糖尿病との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の方々のうち、研究開始から5年後の調査時点に糖尿病やがん、循環器疾患の既往がない女性約3万7千人を、5年間追跡した調査結果にもとづいて、女性関連要因と糖尿病発症との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Journal of Diabetes Investigation 2018年4月WEB先行公開)。

肥満や運動不足、喫煙、糖尿病の家族歴などは、糖尿病のリスク因子としてよく知られていますが、性ホルモンも糖代謝に関連していることが示唆されています。女性ホルモンであるエストロゲンは、インスリン感受性を改善したり、インスリン分泌を高めたりするという報告があります。エストロゲンの血中濃度は、生理周期や妊娠・出産などにより影響を受けることから、これらの要因が糖尿病発症に関連している可能性があります。本研究では、初経年齢、月経状況、閉経年齢、出産回数、初産年齢、授乳歴、ホルモン剤使用などの女性関連要因と糖尿病発症との関連を検討しました。

 

出産回数が多いほど糖尿病発症のリスクが上昇

研究開始時あるいは5年後に行ったアンケート調査のいずれかの情報を用いて、初経年齢、月経状況、閉経年齢、初経から閉経までの期間(生殖可能期間)、出産回数、初産年齢、授乳の有無、ホルモン剤使用、月経規則性、月経日数と、5年後調査以降の5年間の糖尿病発症(513人)との関連を調べました。糖尿病の発症は、研究開始から10年後に行ったアンケート調査で、上記追跡期間内に糖尿病と診断されたことがある場合としました。
その結果、出産回数が多いグループでは未経産婦に比べ、糖尿病発症のリスクが高くなっていました(図)。しかし、肥満度の指標であるBMIを統計学的に調整すると、この関連は弱まりました。出産回数以外の女性関連要因は糖尿病発症との関連はみられませんでした。

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今回の研究では、出産回数が多いほど糖尿病発症のリスクが上昇する傾向がみられました。この関連は肥満度を調整すると弱まったことから、出産に伴う糖尿病リスクの上昇は産後の体重増加が理由の1つとして考えられます(本解析集団において、出産回数が多いほどBMIが高い傾向がみられました)。一方、出産回数以外の要因は糖尿病発症との関連を認めませんでした。これまでの欧米等の研究で、初経年齢や閉経年齢が早い人や、閉経した人は、糖尿病発症のリスクが高いことが報告されています。こうした要因について本研究で関連がみられなかった理由ははっきりしませんが、糖尿病の重要なリスク因子である肥満の割合が欧米と日本では大きく異なるためかもしれません。女性関連要因と糖尿病に関しては日本を含むアジアでの研究が少なく、さらなる研究データの蓄積が必要です。

 

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