多目的コホート研究(JPHC Study)
2010/10/28 緑茶摂取と乳がん罹患との関係について
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、緑茶の摂取量と乳がん発生率との関連を調べた研究の結果が発表されました。
論文の状況は以下の通りです。
Breast Cancer Research 2010年12巻R88
緑茶で乳がん予防は期待できないという研究結果
緑茶飲用は乳がんを予防しない。BioMed Centralのオープンアクセス電子ジャーナルである”Breast Cancer Research”で発表された約5万4000人の女性を平均で13.6年追跡した多目的コホート研究のデータによれば、緑茶摂取量と乳がんリスクとの間 に関連は認められなかった。
今回の研究を担当したのは国立がん研究センター予防研究部の岩崎基室長。岩崎室長によれば、試験管データや動物実験からは緑茶の乳がん予防効果が示されていたが、実際に人を対象とする疫学研究ではどうなのかについての結論は出ていなかった。
多目的コホート研究の対象は日本人女性であり、緑茶摂取量が1週間当たり1杯未満から1日当たり10杯以上までと幅広いという利点がある。それにも関わらず、緑茶と乳がんリスクの間には関連が見られなかった。
今回の研究では、緑茶摂取量は研究開始時と5年後に実施されたアンケート調査で把握された。その後の乳がん罹患については、対象地域における主要な病院の記録と地域がん登録で把握された。緑茶摂取量が週に1杯未満の女性が12%、1日に5杯以上の女性が27%であった。
岩 崎室長によると、要因(緑茶の摂取量)を先に、結果(乳がん罹患)を後に把握するという前向きの研究デザインにより、症例対照研究で必ず問題になる「思い 出しバイアス」を避けることができるという利点がある。緑茶の種類や量に関わらず、日常的な飲用によって、乳がんリスクが減るということはなさそうであ る。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。
緑茶摂取と乳がん罹患との関係について