多目的コホート研究(JPHC Study)
2008/3/25 ヘリコバクター・ピロリ感染と組織型別の胃がんリスク
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、血中のヘリコバク ター・ピロリ抗体(Hp抗体)と胃がんの組織型別のリスクとの関連を調べた結果が 発表されました 原著論文は以下の通りです。 Acta Oncologica 47巻360-365ページ
Hp抗体価が高かったグループで分化型胃がんリスク低、
未分化型胃がんリスク高
多目的コホート研究の調査開始時期の保存血液を用いてHp抗体を測定し、価によっ て陰性と陽性に分け、さらに陽性を抗体価によって3つのグループに分けました。 追跡期間中に発生した噴門部以外の胃がん(分化型242例、未分化型108例)と胃 がんにならなかった対照グループ350例の合計700人を対象に、Hp抗体による胃が んリスクを組織型別に比較しました。 その結果、分化型ではHp陽性者で抗体価が高かったグループほど胃がんリス クが低くなるのに対し、未分化型ではHp抗体価が高かったグループでリスクが 最も高くなりました。
分化型胃がんは胃粘膜萎縮の進行と関連
さらに、胃粘膜萎縮につれて低値になるペプシノーゲンI値(PGI)の結果は、 分化型胃がんで低かったのに対し、未分化型胃がんでは高かったことが分かりま した。 今回の研究から、胃がんの発生におけるHp感染の役割は、組織型別に異なる可 能性が示されました。分化型胃がんは、胃粘膜萎縮が進行し、Hpの数が減り、抗 体価が減った状態から発生しやすいものと推測されます。一方、未分化型胃がん では胃粘膜萎縮との関連は見られず、強い炎症の状態から発生しやすいものと推 測されます。
研究結果について
胃がん予防を目的とするHp除菌の意義が考慮されていますが、既に胃粘膜の萎 縮が進んでしまった場合には、除菌による胃がんの予防効果は低いと考えられて います。今回の研究から、Hp抗体価の高いグループに対しては、萎縮を防ぐとい う意味に加えて、未分化胃がん予防に効果的ではないかと考えられます。 しかしながら、1つの観察型研究の結果にすぎず、また除菌による副作用との バランスなどよく分かっていない部分もあるので、今後さらに検討を重ねる必要 があります。 詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。
・分化型胃がんと未分化胃がんにおけるヘリコバクター・ピロリ感染の意味について -概要-