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多目的コホート研究(JPHC Study)

2007/3/16 イソフラボンと前立腺がん罹患との関係

多目的コホート(JPHC)研究から、大豆製品やイソフラボンの摂取量と、その後の前立腺がんの発生との関係を調べた報告が論文発表されました。 (「キャンサー・エピデミオロジー・バイオマーカーズ・アンド・プリベンション」2007年3月16日発行)

日本人の前向き研究で、イソフラボンの前立腺がん予防効果を検証

アジアの前立腺がんの発生率は、欧米に比べて低く抑えられています。しかし、死亡後の剖検で初めて見つかるラテントがんの割合は、アジアと欧米で差がないことが知られています。アジアに特有な何らかの環境要因が、前立腺の発生を抑えていると考えられます。 大豆製品を主な摂取源とするイソフラボンは、その候補の1つです。そのエストロゲン活性が前立腺がんを予防するというメカニズムが考えられますが、これまでの疫学研究では関係がはっきり示されてはいませんでした。 そこで、イソフラボンの摂取量が多い日本人集団である多目的コホート研究で、前立腺がんとの関連を検討しました。

限局がんだけに、イソフラボンの予防効果

1995年と1998年に、日本全国の10保健所管轄区域にお住まいの45-74歳の男性に対し、食習慣に関するアンケート調査を行い、みそ汁と、豆腐や納豆などの大豆製品と、イソフラボン類のゲニステインおよびダイゼインという栄養成分の摂取量を算出しました。今回の分析の対象となったのは、約4万 3000人で、そのうち、2004年までに、307人で前立腺がんの発生が確認されました。 それぞれの大豆製品や栄養成分の摂取量によって、4つのグループに分け、前立腺がんリスクを比較しましたが、関連がみられませんでした。 次に、前立腺がんを、限局がんと進行がんに分けて比べてみました。すると、限局がんについては、大豆製品、ゲニステイン、ダイゼインの摂取量が多ければ多いほど、限局がんのリスクが低くなりました。この傾向は61歳以上で強く現れ、いずれも、最も多いグループでは最も少ないグループに比べほぼリスクが半減しました。 進行がんについては、みそ汁の摂取量の多いグループでリスクが高くなりましたが、他の大豆製品や栄養成分との関連はみられませんでした。

研究結果について

今回の研究結果について、担当研究者である倉橋典絵・国立がん研究センター予防研究部研究員は、次のように話しています。 「今回の結果から、限局性前立腺がんのリスクは、イソフラボン摂取量が多いグループで低くなることが示されました。イソフラボンには、ラテントがんから臨床がんになるまでの期間を遅らせる作用があると考えられます。日本人は子どもの頃から継続的に大豆製品を食べているので、いつごろ、どれくらい食べれば予防効果が高いのかについては、この研究からはわかりません。 一方、進行がんとの関係はみられませんでした。進行すると腫瘍のエストロゲン受容体が減少しイソフラボンが作用しなくなるか、あるいは限局がんと進行がんはもともと性質が違うものであることが考えられます。また、みそ汁では逆にリスクが高くなってしまいました。今回の研究では進行がんの人数が 74人と少なく、みそ汁との関連は偶然ということも考えられます。いずれにしても、進行度別に効果が異なるという結果の解釈は難しく、イソフラボンと進行性前立腺がんとの関連は、今後さらに研究を重ねた上で慎重に見極める必要があるでしょう。」 詳しくは、概要版をご覧ください。

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