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多目的コホート研究(JPHC Study)

2006/12/20 便通、便の状態と大腸がんの関連について

多目的コホート(JPHC)研究から、便通、便の状態と大腸がんの関連について調べた結果が発表されました。(「アナルズ・オブ・エピデミオロジー」2006年12月発行)。

便秘は大腸がんの原因か

便秘によって、大腸がんリスクが高くなるという長年の仮説があります。便秘がちだと大腸に毒物が長く留まり、がんリスクが高くなるというイメージは受け入れられやすいものです。ただし、最近の前向き研究では、必ずしもこの仮説を支持する結果が出ているわけではありません。

そこで、40-69歳の男女約6万人のデータを用いて、便通の頻度や便の状態によって、その後の大腸がんリスク、さらに部位別に結腸がん、直腸がんリスクがどう変わるかを比較してみました。

便通は、大腸がんリスクと関係ない

まず、生活習慣に関するアンケート調査の中で、便通は毎日あるかどうかをたずね、「毎日2回以上」、「毎日1回」、「週2−3回」の選択肢のうち1つを選んでお答えいただきました。約7年の追跡期間に男性303人、女性176人が大腸がんになりました。各回答グループの大腸がん、結腸・直腸がんリスクを比べると、便通が週2−3回しかなくても、毎日2回以上でも、毎日あるグループと比べて高くなることはありませんでした。

下痢便は、直腸がんリスクと関連があるかもしれない

次に、普段の大便の状態をたずね、「下痢」、「軟便」、「普通」、「硬め」、「下痢と便秘をくり返す」の選択肢のうち1つを選んでお答えいただきました。回答による各グループのその後の大腸がんリスクを、結腸がんと直腸がんに分けて比較しました。その結果、男女とも下痢便で直腸がんリスクが上昇するように見えました。しかし、男性では、最初の2年間に直腸がんになったケースを除くと下痢便の直腸がんリスクが低くなりましたので、逆に、診断前の直腸がんの影響で下痢便になっていた結果ではないかという可能性が残ります。

女性では、最初の2年間に直腸がんになったケースを除いても、下痢便で直腸がんリスクが高くなっていましたが、下痢便のグループで直腸がんになった人数がわずか2名と少なく、この結果がたまたまそうなっただけかもしれない可能性が残ります。

研究担当者のコメント

今回の研究を担当した大谷哲也・群馬大学大学院助手(公衆衛生学)によれば、「週に2−3回の便通程度の便秘の場合は、大腸がんになるかもしれないと思い悩む必要はありません。またそれ以上の高度な便秘(週に1回など)やずっと下痢が続く場合は、大腸がんに限らず何らかの疾患の可能性がありますので、医療機関への受診をお勧めします。」とのことです。


詳しくは、概要版をご覧ください。

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