多目的コホート研究(JPHC Study)
2006/4/11 喫煙と虚血性心疾患との関係
多目的コホート(JPHC)研究から、喫煙習慣と、その後の虚血性心疾患の発症との関係を調べた報告が発表されました(「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・カルディオバスキュラー・プリベンション・アンド・リハビリテーション」2006年4月号)。
虚血性心疾患とは、心筋梗塞に代表される、心臓に血液を送る動脈の血流が悪くなることで生じる疾患で、その原因として動脈硬化や血栓などがあります。
たばこを吸う人の虚血性心疾患リスクは、吸わない人の約3倍
たばこは、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などと並び、虚血性心疾患リスクを高める原因として知られています。喫煙習慣には、血栓や動脈硬化を促すさまざまな作用があります。ただし、国内の疫学研究で、これまでに、たばこが日本人の虚血性心疾患の発症にどれくらい関わっているのかについてはいくつかの研究がありますが、たばこを止めることによって発症がどれくらい予防できるのかを具体的に示すものはありませんでした。
そこで、多目的コホート研究の一環として、40‐59歳の男女約4万人を11年間追跡したデータを用いて、喫煙状況とその後の虚血性心疾患との間にどのような関連があるかを調べてみました。すると、たばこを吸っているグループでは、吸わないグループに比べ、男女ともに虚血性心疾患になるリスクが約3倍になりました。これは、たばことの関連を調べた多目的コホート研究の結果の中で、肺がん(約4倍)に次ぐ高いリスクです。
たばこを止めると、比較的早く予防効果が認められる
さらに、男性喫煙者でたばこの本数との関係をみると、1日の喫煙本数が多いほど、虚血性心疾患になるリスクが高くなりました。心筋梗塞の発症リスクを、たばこを吸わない人と比べると、1日当たり1‐14本で3.2倍、15‐34本で3.6倍、 35本以上で4.4倍でした。
また、禁煙年数との関係をみると、禁煙して2年以内という比較的早い時期にリスクが低下することがわかりました。若い方はもちろん、長年たばこを吸ってきた中年期の方でも、禁煙すれば予防効果が期待できるということになります。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。