多目的コホート研究(JPHC Study)
2005/9/8 肥満指数・身長と大腸がんリスクについて
多目的コホート(JPHC)研究から、肥満指数・身長と大腸がんリスクの関係を調べた報告が論文発表されました。(「キャンサー・コージズ&コントロール」2005年9月号,Volume16, Pages839-850.)
日本でなぜ大腸がんが増えているのか
日本では、大腸がんになる人が年々増加しています。しかし、その主な原因はまだ十分に究明されたわけではありません。
欧米の疫学研究では、肥満や高身長によって大腸がんリスクが高くなるという報告がいくつかあります。そのメカニズムとして、体内のホルモンの関与を示す実験もあります。日本では、欧米に比べると肥満の割合は低く、身長も高くはありません。しかし、極端な肥満や高身長でなくても大腸がんリスクがかなり高くなるならば、そのために大腸がんが増加しているという可能性があります。
そこで、多目的コホート研究では、肥満指数 [ Body Mass Index: 体重(kg)÷身長(m) ÷身長(m) ] と身長という、体型に関わる2つのリスク要因について、大腸がんリスクとの関連を調べました。
この研究の対象となったのは、40−69歳の男女約十万人です。約9年の追跡期間中に約1000人が大腸がんと診断されました。
肥満指数27以上で、男性の大腸がんリスク上昇
まず、肥満指数については、男性では27以上のグループで確実に大腸がんリスクが高くなりました。肥満指数が27以上30未満のグループの大腸がんリスクは、25未満のグループの大腸がんリスクを1として比較すると、1.4でした。30以上の肥満グループでは1.5になりました。
もし、リスクが高くなり始める肥満指数25以上の人がいなかったならば、日本人男性の大腸がんの7%は予防できていたはずという計算になります。
女性では肥満指数による大腸がんリスクの差はみられませんでした。
また、身長については、男性でも女性でも、大腸がんリスクとの関連はみられませんでした。
肥満指数は27を超えないように
この結果について、分析を担当した大谷哲也・国立がん研究センター予防研究部研究員は、次のように述べています。
「欧米の研究と同様に、日本人男性でも、肥満指数27以上で大腸がんリスクが高くなった。しかし、日本人では肥満指数27以上の人の割合は少なく、今回の対象者でも10%程度。太っていない人に対するリスクが1.4では、日本で大腸がんがこれほど増えている説明にはならない。今後、別のリスク要因についても調べる必要がある。
大腸がんだけでなく総合的な健康との兼ね合いでは、日本人の場合にはむしろ過度のやせに注意すべきだが、太りすぎも、一線を超えないよう注意すべきであろう。
女性の肥満に関しては、他の研究結果をみても、大腸がんとの関連があるという結果、ないという結果の両方があり、はっきりしていない。閉経状態によるという説もあるので、我々も閉経前と閉経後に分けて調べてみたが、どちらにしても関連はみられなかった。
また、身長については、日本人集団ではリスクが高くなるほど背が高い人があまりいなかったとも考えられる。」
なお、JPHC研究では、これまでに、喫煙と大量飲酒という原因で日本人男性の大腸がんの4割以上は説明できること、果物と野菜不足では大腸がんリスクを説明できないこと、女性の「欧米型」と「伝統型」食生活で結腸がんリスクが上昇することを報告しました。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。